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    アートメイクの仕組み|色素が入る皮膚の層と、退色のメカニズム

    2026年6月15日

    Medical ColumnTokyo Ueno

    「アートメイクは表皮に入れるから消える」とよく言われますが、これは正確ではありません。色素が入る本当の層と、退色を決める仕組みを、皮膚科学の論文をもとに図解します。

    色素は皮膚のどこに入るのか

    アートメイクとタトゥーの最大の誤解がここにあります。よく「アートメイクは表皮に入れるから数年で消え、タトゥーは真皮に入れるから一生残る」と説明されますが、これは科学的には正確ではありません。

    論文に基づく訂正:どちらも「真皮」に入る

    表皮は約4〜6週間で生まれ変わる(ターンオーバー)ため、表皮に入れた色素は数週間で剥がれ落ち、長期的には残りません。実際にはアートメイクもタトゥーも色素は真皮に届いており、古いタトゥーでも色素の大半は真皮(細胞内)に確認されます[1][3]。両者の本当の違いは「真皮のどの深さか」と「色素の性質」です。

    皮膚表面(角質) 表皮 epidermis ・ 約0.05〜0.1mm 真皮・乳頭層 papillary dermis(浅い) 真皮・網状層 reticular dermis(深い) 皮下組織 0mm 0.1 1.0 2.0 アートメイク タトゥー
    図1:色素はどちらも「真皮」に入る。アートメイクは真皮の浅い層(乳頭層〜真皮上層)、タトゥーは真皮の深い層(網状層、実測で表面下およそ1.5〜2mm)に色素が留まる[1]。深さの数値は部位・施術により変動する(目安)。

    タトゥーの色素は実測で表面下およそ1.5〜2mmに分布し、その大半が100nm未満の微粒子として真皮のコラーゲン網に埋め込まれることが報告されています[1]。アートメイクはこれより浅い真皮上層を狙うため、後述する理由で退色しやすくなります。

    なぜ真皮の色素は留まるのか

    真皮に入った色素がなぜその場に留まるのか——長く謎でしたが、近年の研究でマクロファージ(異物を食べる免疫細胞)の働きが鍵だとわかってきました。

    アートメイク(数年で退色)

    小さく光に弱い色素 → 少しずつ排出・分解

    タトゥー(半永久的に残る)

    大きく不溶の塊 → 捕捉され続けて留まる
    図2:色素はマクロファージに取り込まれ、細胞が死ぬと放出され、また別のマクロファージに取り込まれる——この「捕捉と再捕捉」が繰り返されるため色素はその場に留まる[2]

    マクロファージは色素を「異物」として取り込みますが、粒子が大きく不溶なため消化しきれません。やがてその細胞が寿命を迎えて色素を放出すると、近くの別のマクロファージがまた取り込みます。この捕捉と再捕捉のサイクルにより、色素は排出されずに真皮へ留まり続けます[2]

    なぜアートメイクは「数年で退色」するのか

    同じ真皮でも、アートメイクがタトゥーより早く退色するのは、主に次の要因が重なるためです。

    退色を早める要因仕組み
    色素が浅い層にある真皮の浅い層は紫外線やターンオーバーの影響を受けやすく、色が抜けやすい。
    粒子が小さい・水溶性小さく溶けやすい色素はリンパで運ばれたり分解されたりしやすい[4]
    有機色素は光に弱いアートメイクに多い有機色素は紫外線で分解(光退色)しやすい[4]
    色によって抜け方が違う色素ごとに耐光性が異なり、退色とともに色味(赤み・黄み)が変化することがある[5]

    これが、アートメイクが「半永久的」=完全には消えないが、数年かけて薄くなり、定期的なリタッチで色味と形を保つ施術である理由です。色素の化学がどう退色・変色に関わるかは、インクの原料の解説で詳しく扱います。

    定着・退色の個人差

    色の定着や退色の早さには、肌質・体質・生活習慣(紫外線・スキンケア)・部位などによる個人差があります。多くの場合、複数回の施術(リタッチ)で色味と形を整えていきます。リップやアイラインなど部位ごとの定着のしやすさも異なります。

    医療機関で行う理由

    アートメイクは皮膚に針で色素を入れる侵襲的な医療行為であり、衛生管理や、万が一のアレルギー反応・トラブルへの対応が求められます。医療機関であれば、滅菌・衛生管理や緊急時の医療対応を含めた体制のもとで施術を受けられます。法的な位置づけの詳細はタトゥーとの違い・法律で解説しています。

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    参考文献

    1. Grant CA, et al. Tattoo ink nanoparticles in skin tissue and fibroblasts. Beilstein J Nanotechnol. 2015;6:1183-91.(色素の沈着深度・粒子径)リンク
    2. Baranska A, et al. Unveiling skin macrophage dynamics explains both tattoo persistence and strenuous removal. J Exp Med. 2018;215(4):1115-33.(マクロファージによる色素の捕捉・再捕捉)リンク
    3. Kröger M, et al. Tattoo pigments are localized intracellularly in the epidermis and dermis. Dermatology. 2023;239(3):478-93.リンク
    4. Rigali S, Cozzi C, Liszewski W. Identification of the pigments used in permanent makeup. J Am Acad Dermatol. 2024;91(3):474-9.リンク
    5. Anderson RR, et al. Cosmetic tattoo ink darkening: a complication of Q-switched and pulsed-laser treatment. Arch Dermatol. 1993;129(8):1010-4.リンク

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