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    アートメイクを受けられない人は?予約前に確かめたい条件

    2026年9月7日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    アートメイクを受けられない人は?予約前に確かめたい条件

    なぜカウンセリングで細かく聞かれるのか

    アートメイクの予約をすると、施術の前に体調や持病、飲んでいる薬などを細かく聞かれます。初めての人は「そこまで聞くの?」と感じるかもしれません。厚生労働省は、針先に色素を付けて眉やアイライン、リップなどを描くアートメイクを医行為としています。医師が行わなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれがある行為、という位置づけです[1]。細かい問診は、皮膚に針を入れる処置を安全に行うための最初の確認です。

    質問の目的は、体へのリスクを減らすことと、仕上がりを守ることです。感染や出血、アレルギーを防ぐと同時に、色がきちんと定着して思い描いたデザインに仕上がるようにします。永久メイクアップについて、これまでの研究をまとめた論文でも、感染、アレルギーによる合併症、炎症による合併症が主なトラブルとして挙げられています。衛生管理や施術後のケアが不十分だと、これらが起こりやすくなると述べられています[2]。

    断られる場合も、その理由はひとつではありません。「今日は体調の面で見合わせる」「時期をずらせば受けられる」「体質や持病の面で適応外になる」という区別があります。この記事では、カウンセリングで聞かれる項目を順に取り上げます。予約前に自分で照らし合わせて、当日に慌てないための準備に使ってください。

    Q. 体調について、何を聞かれますか

    まず聞かれるのは、当日の体調と、いま感染症にかかっていないかです。ウェールズ政府の施術者向けの指針は、単純ヘルペスの症状が出ている場合など、活動中のウイルス感染がある人への施術は避けるよう示しています[4]。日本の医療機関でも、全身性の感染症がある場合は施術不可としている例があります[8]。感染症があるときに皮膚へ針を入れると、体への負担が増えるだけでなく、傷の治りにも影響します。

    感染は、アートメイクで最も注意される合併症のひとつです。米国FDAは、滅菌されていない器具や針を通じて、HIVや肝炎、黄色ブドウ球菌などによる皮膚感染症が伝わりうると説明しています[3]。施術者が衛生的な手順を守っていても、汚染されたインクによって感染が起きた例があり、抗菌薬による長期の治療が必要になることもあるとしています[3]。だからこそ施術側は器具やインクの管理を徹底し、受ける側の体調も確認します。

    発熱や強い体調不良があるときは、予約日が近くても無理をしないでください。「風邪気味だけど行けそう」という程度でも、当日の問診で正直に伝えれば、施術するかどうかを医師と一緒に決められます。体調は一時的な条件です。回復すれば改めて受けられるので、日程の変更を遠慮する必要はありません。迷ったときは、予約時や前日に連絡して相談してください。

    Q. 妊娠中・授乳中でも受けられますか

    妊娠中・授乳中かどうかは、ほぼ必ず聞かれる項目です。日本の医療機関には、妊娠中を施術不可としている例があります[8]。一方で、医学的な扱いは世界で一律ではありません。ウェールズ政府の2025年の指針は、妊娠・授乳を、どんな場合も施術を避けるべき条件(絶対的な禁忌)とはしていません。施術する部位や施術の影響を考えて判断する事項としています[4]。つまり「世界共通の絶対禁忌」ではなく、予約先の基準と診察する医師の判断で決まる条件です。

    実際には、多くの予約先で妊娠中・授乳中は見合わせとなります。医療機関ごとに基準が違うため、該当する人や妊娠の可能性がある人は、予約前にそのまま伝えてください。見合わせは意地悪ではなく、体調が変わりやすい時期に皮膚へ針を入れる処置を避けるための判断です。急いで受ける理由がなければ、出産や授乳を終えてから受けるのが、いちばん確実で迷いのない選び方です。

    Q. 持病があると断られますか

    「持病がある=受けられない」ではありません。公開されている医療機関の基準を見ると、施術不可の条件と、主治医の判断が必要な条件に分かれています[8]。たとえば日高病院美容皮膚科の基準では、心臓病、重度の糖尿病、自己免疫疾患や免疫機能の低下、ケロイド体質などが施術不可の例です[8]。一方、高血圧や心疾患などの持病、悪性腫瘍(がん)の治療中は、主治医の判断が必要な条件とされています[8]。

    糖尿病が注意される理由は、皮膚の治りと感染です。ウェールズ政府の指針も、糖尿病がある人では、皮膚の治りや感染のリスクに問題が起こりうると書いています[4]。手術の分野では、対象の人を決めて、その後の経過を追って調べた研究14件、計91,094人分の結果をまとめて計算し直した分析(メタ解析)があります。糖尿病のある人は、手術した部分に感染を起こすリスクが高くなっていました。ほかの要因の影響を差し引く前で2.02倍(95%信頼区間1.68〜2.43)、差し引いた後で1.69倍(同1.33〜2.13)です[5]。かっこ内の数字は、本当の値がおそらく入る範囲(信頼区間)の目安です。アートメイクを直接調べた研究ではありませんが、皮膚に傷をつくる処置全般の参考になる数字です。

    出血しやすい病気も確認されます。重い出血性疾患(血が止まりにくい病気)がある人は、体に傷をつける処置で出血が長引くおそれがあります。そのため指針は、専門医に相談するよう示しています[4]。持病がある人は、病名だけでなく「いまどんな状態か」「主治医に相談済みか」を伝えると、判断がスムーズになります。予約前に主治医へ一言相談しておくと、当日その場で結論が出やすくなります。

    施術の可否をまとめた3列カード図。医療機関が公開している基準の例で、予約先での確認が必要です。

    Q. 飲んでいる薬は全部伝えるべきですか

    答えは「はい」です。特に血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)と、ステロイド薬は必ず伝えてください。医療機関の基準では、抗凝固薬やステロイド薬の内服は主治医の判断が必要な条件とされています[8]。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて申告するのが安全です。お薬手帳を持参すれば、名前を思い出せなくても正確に伝えられます。

    抗凝固薬を飲んでいる人が「施術のために自分で薬を止める」のは危険です。ウェールズ政府の指針は、血栓(血のかたまり)ができるリスクがあるため、抗凝固薬を自己判断で中止すべきでないとしています[4]。服用中に施術すると、内出血や出血によって色素が抜けたりにじんだりするほか、感染リスクが加わる可能性があるとも記載しています[4]。薬を止めるリスクと飲んだまま受けるリスクの両方を知ったうえで、処方医と施術する医師が判断する必要があります。

    皮膚の手術の前に気をつけることを、これまでの研究からまとめた論文によれば、抗血栓薬(血を固まりにくくする薬)を皮膚の手術の前にやめる必要があることはまれです。大きな処置を伴う場合は、比較的新しいタイプの飲む抗凝固薬(新規経口抗凝固薬)を続けるかどうか、処方医と相談するのが適切とされています[6]。ワルファリンでは、出血による合併症が増えたという報告があります。一方、アスピリンやNSAIDs(解熱鎮痛薬の一種)については、決まった手順で研究を集めた大規模な分析があります。その分析では、比べる相手のグループ(対照群)より合併症が増え、その差が偶然とは考えにくい、という結果は確認されていません[6]。休薬するかどうか、いつからかは薬の種類や目的で変わるため、この記事では期間を示しません。必ず処方医に確認してください。

    Q. 肌の状態はどこまで見られますか

    施術する部位の皮膚は、当日に必ず確認されます。指針は、湿疹や皮膚炎、乾癬がなく、傷もない皮膚にだけ施術を行うべきだとしています[4]。眉やリップに湿疹やニキビ、かき傷がある場合は、その日は見合わせて治ってから受けるのが基本です。これは一時的な条件なので、皮膚が落ち着けば受けられます。リップの施術では、口唇ヘルペスにかかったことがある場合も、主治医の判断が必要な条件とされています[8]。

    乾癬がある人は特に注意が必要です。乾癬には、皮膚が物理的な刺激を受けた場所に、新しく乾癬の症状が出るケブネル現象というものがあります[4]。同じ指針によると、乾癬は人口の2%にみられ、乾癬がある人の3分の1にケブネル現象が起こるとされています[4]。針で皮膚を刺激するアートメイクは、まさにこの「物理的な刺激」にあたります。乾癬にかかったことがある人は、いま症状が出ていなくても必ず申告してください。

    アレルギーの有無も聞かれます。重度の金属アレルギーや局所麻酔アレルギーは、施術不可の例として挙げられています[8]。色素へのアレルギー反応、肉芽腫(異物のまわりにできるしこり)、ケロイド形成は、FDAも主な合併症として挙げています[3]。タトゥーの合併症を専門に診る外来の研究では、受診した301人に起きた308件の合併症のうち、91.9%が長く続く慢性のものでした。赤い色素へのアレルギー反応が50.2%、黒い色素による長引く炎症が18.2%を占めています[7]。合併症で受診した人だけを集めた研究なので、合併症がどのくらいの割合で起こるかを示す数字ではありません。それでも、いったん起こると長引きやすいことが分かります。

    Q. 最近受けた美容医療は関係ありますか

    大いに関係します。ボトックスやヒアルロン酸の注入、レーザー、ピーリング、レチノール製品の使用などは、必ず聞かれる項目です。研究をまとめた論文でも、美容のための注入剤(フィラー)や局所麻酔薬を皮膚に使うと、永久メイクアップの見た目がずれたり変わったりすることがあると書かれています[2]。皮膚の張りや表情筋の動きが変わると、描いたデザインの位置や左右差に影響するためです。

    医療機関が公開している予約基準を見ると、待機期間の目安が分かります。藤岡皮フ科は、ボトックスやヒアルロン酸を注入した直後は、表情筋の動きや皮膚の張り具合が変わり、デザインに影響しうるとしています。そのため、施術前に1か月以上空けることを勧めています[9]。レーザー脱毛、レーザーフェイシャル、フォトフェイシャル、ピーリングも、施術前1か月以上は避けるよう示しています。皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)を早めて、色素が外に出ていくことにつながるという理由です[9]。眉毛のブリーチは2週間避けるよう案内しています[9]。

    日高病院美容皮膚科では、ヒアルロン酸・ボトックス・レーザー治療後は1か月程度、美容整形手術後は3か月程度、レチノール製品の使用後は1か月程度としています。眉毛や頭髪のブリーチ・カラーリング後とピーリング後は、2週間程度は日程を調整する必要があると案内しています[8]。これらは各院の運用基準で、全国一律の医学的な基準ではありません。直近に美容医療を受けた人や予定がある人は、予約時に日付を伝えて、いつ受けられるかを確認してください。

    アートメイク前に控える施術・製品の目安期間。医療機関が公開している基準の例で、予約先での確認が必要です。

    Q. 黙っていたら、どうなりますか

    申告漏れで困るのは、施術者ではなく自分自身です。たとえば抗凝固薬を伝えずに施術を受けると、内出血や出血で色素が抜けたりにじんだりして、仕上がりに直接響きます[4]。乾癬を伝えなければ、施術した部位に新たな病変が出るおそれがあります[4]。直近のフィラー注入を伝えなければ、デザインがずれる原因になります[2]。事前にこうした情報を伝え、施術を受けられるかどうかや注意点を相談しておくことが大切です。

    感染やアレルギーの合併症は、いったん起こると長引くことがあります。FDAは、汚染されたインクによる感染で抗菌薬の長期治療が必要になった例を挙げています[3]。合併症外来の研究でも、308件のうち91.9%は慢性の経過をたどっていました[7]。持病や体質を隠して施術を受けると、こうしたリスクを高めるだけでなく、トラブルが起きたときに原因を突き止めることも難しくなります。

    「これを言ったら断られるかも」と思う項目ほど、伝える価値があります。断られること自体は不利益ではなく、体と仕上がりを守るための判断です。多くの場合は「時期をずらす」「主治医に確認してから」という形で道が残ります。問診票には正直に書き、書ききれないことは口頭で補足してください。

    予約前に自分で確かめておきたいこと

    ここまでの内容を、予約前に自分で見直せる形にまとめます。まず、体調と皮膚の状態です。発熱や感染症がないか、施術部位に湿疹・傷・ヘルペスがないかを確認します[4, 8]。次に、妊娠・授乳の有無です。該当する人や可能性がある人は、予約先の基準を先に聞いてください[4, 8]。この二つは一時的な条件なので、当てはまっても時期を待てば受けられる場合がほとんどです。

    持病と薬も確認します。糖尿病、心臓病、出血性疾患、自己免疫疾患、ケロイド体質、金属アレルギーの有無を思い出し、抗凝固薬やステロイド薬を含めた服用中の薬をお薬手帳で確かめます[4, 8]。薬を自分で止めないことが大前提です[4]。持病がある人は、予約前に主治医へ相談しておくと、当日の判断が早くなります。

    最後に、直近の美容医療です。ボトックス、ヒアルロン酸、レーザー、ピーリング、レチノール、眉のブリーチをいつ受けたかをメモしておきます[8, 9]。「一時的に見合わせる条件」は時期を待てば解決し、「適応外の条件」は医師の診察で判断されます。どちらに当たるか分からないときは、予約時にそのまま相談してください。カウンセリングは、受けられるかどうかを一緒に確かめる場です。

    予約前セルフチェックのチェックリスト。

    よくある質問

    持病があるとアートメイクは受けられませんか?

    持病があれば全員が受けられないわけではありません。医療機関の公開基準では、心臓病や重度の糖尿病、自己免疫疾患などを施術不可の例としています。一方、高血圧・心疾患や悪性腫瘍(がん)の治療中、抗凝固薬やステロイド薬の内服は、主治医の判断が必要な条件としています。病名と現在の状態、主治医への相談状況を予約時に伝えてください。

    血液をサラサラにする薬を飲んでいます。施術前に止めるべきですか?

    自己判断で止めないでください。抗凝固薬の中止には血栓のリスクがあります。服用したまま施術すると内出血で色素が抜けたりにじんだりすることがあるため、処方医と施術する医師の両方に相談したうえで判断します。薬を休むかどうかや休む期間は、薬の種類や目的で異なるため、一般向けの記事では示せません。

    妊娠中・授乳中はアートメイクを受けられますか?

    多くの予約先では見合わせとなります。ただし医学的な扱いは一律ではありません。ウェールズ政府の2025年の指針では、どんな場合も施術を避けるべき条件(絶対的な禁忌)とはせず、部位や影響を考慮する事項としています。該当する人や妊娠の可能性がある人は、予約前に必ず伝えてください。

    ボトックスやヒアルロン酸を打ったばかりでも受けられますか?

    表情筋の動きや皮膚の張りが変わり、デザインがずれる原因になるため、多くの医療機関では1か月程度空けるよう案内しています。待機期間は各院の基準なので、直近に受けた日付を予約時に伝えて確認してください。

    アートメイクをするとMRIを受けられなくなりますか?

    受けられなくなるわけではありません。米国FDAは、MRI検査の最中の腫れや焼けるような感じ、画像への影響の報告はあるもののまれで、長く続く影響はないようだとしています。検査を受けるときは、担当者にアートメイクをしていることを伝えてください。


    参考文献

    1. [1]. 厚生労働省. 美容所等におけるアートメイク施術について. (厚生労働省, 2025). リンク
    2. [2]. Ghazal Ghafari, Jack Newcomer, Sarah Rigali, Walter Liszewski. Permanent makeup: A review of its technique, regulation, and complications. (Journal of the American Academy of Dermatology, 2024). doi:10.1016/j.jaad.2024.01.098. リンク
    3. [3]. U.S. Food and Drug Administration. Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet. (U.S. Food and Drug Administration, 2024). リンク
    4. [4]. Welsh Government. Special Procedures Mandatory Licensing Scheme: Guidance for Applicants for a Special Procedure Licence, and Licence Holders: Tattooing (including Semi-Permanent Make-up). (Welsh Government, 2025). リンク
    5. [5]. Yu Zhang, Qiu-Jian Zheng, Sheng Wang, Shi-Xing Zeng, You-Ping Zhang, Xue-Jiao Bai, Tie-Ying Hou. Diabetes mellitus is associated with increased risk of surgical site infections: A meta-analysis of prospective cohort studies. (American Journal of Infection Control, 2015). doi:10.1016/j.ajic.2015.04.003. リンク
    6. [6]. Shivani V. Strickler, et al.. Preventing Complications in Dermatologic Surgery: Pre-surgical Concerns. (Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2022). リンク
    7. [7]. S. A. S. van der Bent, D. Rauwerdink, E. M. M. Oyen, K. I. Maijer, T. Rustemeyer, A. Wolkerstorfer. Complications of tattoos and permanent makeup: overview and analysis of 308 cases. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2021). doi:10.1111/jocd.14498. リンク
    8. [8]. 日高病院 美容皮膚科. 医療アートメイクの注意事項. (医療法人社団日高会 日高病院 美容皮膚科, 不明). リンク
    9. [9]. 藤岡皮フ科. アートメイク施術時の注意事項. (藤岡皮フ科, 2023). リンク

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