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    タトゥー除去後の黒ずみはどれくらい起きる?論文の人数で見る色素沈着

    2026年11月2日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    タトゥー除去後の黒ずみはどれくらい起きる?論文の人数で見る色素沈着

    炎症後色素沈着の見た目と、出てくる時期

    炎症後色素沈着(PIH)は、炎症や皮膚の傷のあとに起こる、後天的な色素の増加です[1]。皮膚が回復する途中でメラニンという色素が増え、その部分が周りより濃く見えます。最初に炎症が起きた場所と同じ範囲に、斑点やまだらとして現れるのが特徴です[1]。レーザー除去では、照射して炎症が起きた範囲に沿って茶色っぽい色が出ることがあります。

    色の見え方は、メラニンがたまる深さで変わります。表皮(皮膚のいちばん外側の層)の場合は、黄褐色から濃い褐色に見えます[1]。治療をしなくても、数か月から数年かけて薄くなることがあります[1]。真皮(表皮の下の層)にメラニンが残ると青灰色に見え、長く続くことや、そのまま残ることがあります[1]。また、紫外線を浴びたり、炎症が続いたりぶり返したりすると悪化することがあります[1]。

    研究で色素沈着が記録されている時期は、照射を重ねている期間から、最後の照射の数か月後までです。アジア人のタトゥーを調べた比較試験では、初回照射の1週間後と、4回目の照射を終えてから3か月後に評価し、色素沈着が報告されています[4]。ピコ秒レーザーの試験では、最後の照射から1か月後と3か月後に評価し、3か月後の時点で色素沈着が報告されています[5]。404人の研究では、色素沈着が続いた期間は2〜4か月でした[2]。

    皮膚の断面図。上に表皮、下に真皮を描き、表皮にメラニンがたまった場合は「黄褐色〜濃褐色・数か月〜数年で薄くなることがある」、真皮に残った場合は「青灰色・長く続く

    照射後に黒っぽく見えるものが、すべて色素沈着とは限りません

    照射後の肌が黒っぽく見えると、それを全部「色素沈着」と呼びたくなります。しかし論文では、これらを分けて数えていることがあります。イタリアの紹介施設で1995年から2010年までに登録された397人のうち、352人を解析した研究があります[9]。この研究では、色素沈着は352人中1人、約0.3%でした。一方で、黒っぽく変化した例(darkening)は352人中17人、約4.8%と、別の項目として集計されています[9]。

    つまり、同じ研究の中でも「黒っぽく見えた」例は、色素沈着の17倍の人数で記録されていました。この数字をそのまま色素沈着の発生率として読むと、頻度を大きく見誤ります。この研究は、黒っぽく変化した例(darkening)を、もとのインクの色が黒に変わることとして数えています[9]。メラニンが増える色素沈着とは、別の変化です。

    見た目だけで原因を見分けるのは、ご自身では難しいことが多いです。原因が違えば、様子を見るべきか、照射の計画を見直すべきかも変わります。照射後に黒っぽい色が出て気になるときは、写真を撮っておき、次の診察で医師に見せてください。変化した時期と経過がわかると、判断の助けになります。

    352人を表す100%積み上げ横棒、または小さな人型アイコン群。「色素沈着 1人(0.3%)」と「黒っぽく変化(darkening)17人(4.8%)」を別々の

    論文ごとに見る、色素沈着の人数と割合

    肌の色が濃いフィッツパトリック皮膚タイプV・VI(肌の色と日焼けのしやすさによる分類)のエチオピア系404人を対象にした研究があります[2]。青黒い炭素系タトゥーを、QスイッチNd:YAGレーザー(380人)とQスイッチルビーレーザー(24人)で治療しました[2]。照射は3〜6回、平均3.6回です。軽度で一時的な色素沈着は404人中177人、約44%に出ました[2]。続いた期間は2〜4か月で、瘢痕(傷あと)や永続的な色の変化は報告されていません[2]。

    クウェートで、皮膚タイプVの100人のアマチュアタトゥーを治療した研究もあります[3]。755nmのQスイッチアレキサンドライトレーザーを使い、完全に消えるまでの照射回数は平均6回でした。色素沈着は100人中38人、38%に報告されています[3]。これに対し、イタリアの352人のコホート(同じ人たちを時間を追って記録する研究)では、352人中1人、約0.3%でした[9]。この施設ではNd:YAGとアレキサンドライトのQスイッチレーザーを使い、照射間隔は6週間以上でした[9]。

    ピコ秒レーザー(光をごく短い時間で当てる機器)の研究もあります。黒や青のタトゥーに755nmのピコ秒アレキサンドライトレーザーを照射した試験では、登録した15人のうち2人に色素沈着がありました[5, 6]。アジア人11人の37個のタトゥーを4区画に分けて比べた試験では、照射部位の21.6〜35.1%に軽度から中等度の色素沈着が見られました[4]。ピコ秒とナノ秒のレーザーを比べた別の試験でも、両方のレーザーで色素沈着が生じています[8]。

    横棒グラフで研究ごとの色素沈着の割合を並べる。各棒のラベルに「対象・人数・機器」を添える:エチオピア系 皮膚タイプV・VI 404人中177人(44%)Qスイッ

    頻度に大きな幅が出る理由として考えられる、肌タイプと観察期間の違い

    数字を並べると、色素沈着の頻度は0.3%から44%まで開いています。高い数字が出た研究は、皮膚タイプV・VIの404人で44%[2]、タイプVの100人で38%[3]でした。どちらも肌の色が濃い人を対象にしています。ただし、これらの研究と352人のコホート[9]とでは、機器、照射の設定、タトゥーの種類も異なります。そのため、肌タイプだけが差を生んだとは言い切れません。

    観察する期間の違いも、数字に影響します。404人の研究では、最後の照射から6〜8か月後まで経過を見ています[2]。アジア人の比較試験は最後の照射から3か月後まで[4]、ピコ秒レーザーの試験は最後の照射から1か月後と3か月後に評価しました[5]。この試験は15人が登録し、最後まで続けたのは12人です[5]。表皮の色素沈着は数か月で薄くなることがあるため[1]、いつの時点で数えたかによって割合は変わりえます。

    研究の集め方そのものにも差があります。ある系統的レビュー(関連する研究を決まった方法で集めて比べる論文)は、7つのデータベースなどで見つかった3,037件から36研究を採用しました[10]。内訳はランダム化比較試験(治療の割り当てをくじ引きのように決めた試験)7件、非ランダム化比較試験2件、症例集積研究(患者さんの経過をまとめた報告)27件です[10]。著者自身も、研究ごとのばらつきを限界として挙げています[10]。1つの平均値で考えるより、自分の肌や機器に近い条件の研究を参考にするほうが役立ちます。

    診察室のリネンに並ぶ肌の色が異なる三人の手と自然光が映す肌の質感

    機器の種類と照射の強さで変わる起きやすさ

    同じ機器でも、照射の強さで結果は変わります。クウェートの100人の研究では、照射エネルギーの強さ(フルエンス)を5〜7J/cm²の範囲で使いました[3]。その結果、フルエンスが高いほど色素沈着と色素脱失の両方が増えたと報告されています[3]。早く消そうとして出力を上げると、肌への負担が大きくなる場合があります。出力の決め方は、肌の状態を見ながら医師と相談することが大切です。

    機器の違いを同じタトゥーの上で比べた研究もあります。アジア人11人の37個のタトゥーを4区画に分け、ピコ秒とナノ秒のレーザーを、532nmと1064nmの波長でそれぞれ照射しました[4]。照射は4週間隔で4回です。色素沈着が出た割合は、532nmナノ秒で35.1%、532nmピコ秒で24.3%、1064nmナノ秒で27.0%、1064nmピコ秒で21.6%でした[4]。この試験では、同じ波長ならピコ秒のほうが数字は低めでしたが、統計的な差を確かめた結果は示されていません。瘢痕はどの条件でも報告されていません[4]。ただし、対象は11人と少人数です。

    2×2のマス目の図。縦軸に波長(532nm/1064nm)、横軸にパルス幅(ナノ秒/ピコ秒)をとり、各マスに色素沈着が見られた照射部位の割合(35.1%、24.

    白抜け(色素脱失)と比べると、頻度や続く期間はどう違うのか

    色素脱失は、色素沈着とは逆に、色が抜けて周りの肌より白く見える状態です。どちらが多いかは研究によって入れ替わります。タイプVの100人の研究では、色素沈着が38人、色素脱失が29人でした[3]。ピコ秒レーザーの試験では、15人中2人が色素沈着、15人中3人が色素脱失です[6]。352人のコホートでは、色素沈着が1人、一時的な色素脱失が8人、永続的な色素脱失が8人でした[9]。

    色素脱失は、機器による差がとくに目立ちます。青黒いタトゥー42個を3種類のQスイッチレーザーで同時に比べた研究があります[7]。ルビーレーザーはタトゥーが最もよく薄くなった一方で、長く続く色素脱失が最も多く出ました。Nd:YAGレーザーでは色素脱失は出ていません[7]。23人・30個のタトゥーを半分ずつ照射した試験でも、色素脱失は694nmナノ秒レーザー側の30個中3個だけでした[8]。色素沈着は両方のレーザーで生じています[8]。

    続く期間も、どちらが長いと一律には言えません。404人の研究では、色素沈着は2〜4か月で、永続的な色の変化はありませんでした[2]。表皮の色素沈着は数か月から数年で薄くなることがある一方、真皮に残ると長く続くことがあります[1]。色素脱失についても、352人のコホートでは一時的な例と永続的な例が8人ずつ報告されています[9]。

    研究ごとに「色素沈着」と「色素脱失」を左右に並べた対の棒グラフ。クウェート100人:38人/29人[3]、ピコ秒アレキサンドライト15人:2人/3人[6]、イタ

    色素沈着を悪化させないために、照射の前後でできること

    炎症後色素沈着は、紫外線や、炎症が続いたりぶり返したりすることで悪化することがあります[1]。照射した部分は、衣服で覆うなどして日差しにさらさないようにしましょう。かゆくても、こすったり引っかいたりして刺激を重ねないことも大切です。照射後のケアの具体的な方法や、使ってよい保湿剤については、当日ご案内します。

    もし茶色っぽい色が出ても、一時的なものとして記録している研究があります。404人の研究では、色素沈着は2〜4か月で落ち着き、永続的な色の変化は報告されていません[2]。ただし、経過には個人差があり、真皮に残ると長く続くこともあります[1]。色の変化に気づいたら、写真で経過を残し、診察時に医師へ見せてください。

    数字を見ると、色素沈着の起きやすさは、肌タイプ、機器、照射の強さによって変わります[2, 3, 4, 9]。過去に日焼けやにきびのあとが茶色く残ったことがある方は、診察時にお伝えください。照射の出力や間隔は、肌の状態を診たうえでご案内します。不安な点は予約時にご相談ください。

    診察台の上で前腕の内側に白い保湿クリームを塗り広げる手元

    よくある質問

    タトゥー除去後の色素沈着は、どれくらいの人に起きますか?

    研究によって大きく異なります。肌の色が濃いタイプV・VIの404人を対象にした研究では、404人中177人(約44%)に軽度で一時的な色素沈着が出ました。タイプVの100人を対象にした研究では100人中38人でした。一方、イタリアの紹介施設で352人を解析した研究では352人中1人(約0.3%)でした。肌タイプ、機器、設定、観察期間が研究ごとに違うため、単純には比べられません。

    色素沈着はずっと残りますか?

    404人を対象にした研究では、色素沈着は2〜4か月続き、永続的な色の変化は報告されていません。表皮(皮膚のいちばん外側の層)の色素沈着は、治療しなくても数か月〜数年かけて薄くなることがあります。一方、真皮(その下の層)にメラニンが残ると青灰色に見え、長く続くことがあります。経過には個人差があるため、気になる変化は診察時に医師へご相談ください。

    照射後に黒っぽく見える部分は、すべて色素沈着ですか?

    すべてが色素沈着とは限りません。352人を解析した研究では、色素沈着(352人中1人)とは別に、黒っぽく変化した例が352人中17人(約4.8%)として集計されています。見た目だけで原因を見分けるのは難しいため、自己判断せずに医師の診察で確認してください。

    色素沈着と白抜け(色素脱失)は、どちらが起きやすいですか?

    研究によって結果が逆になります。タイプVの100人を対象にした研究では、色素沈着が38人、色素脱失が29人でした。352人のコホートでは、色素沈着が1人で、色素脱失は一時的なものが8人、永続的なものが8人でした。どちらが多いかは、機器や肌タイプ、設定によって変わります。

    色素沈着を悪化させないために、照射後に気をつけることはありますか?

    炎症後色素沈着は、紫外線や、炎症が続いたりぶり返したりすることで悪化することがあります。照射した部分を日差しにさらさないようにし、こすったり刺激したりしないことが大切です。具体的なケアの方法は、当日ご案内します。


    参考文献

    1. [1]. Erica C. Davis, Valerie D. Callender. Postinflammatory Hyperpigmentation: A Review of the Epidemiology, Clinical Features, and Treatment Options in Skin of Color. (Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2010). リンク
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    3. [3]. Kholoud Darwish Qasem, Mohammad Fehan Alotaibi. Laser treatment of amateur tattoos in Arabs in Kuwait: effectiveness and safety. (Journal of Dermatological Treatment, 2012). doi:10.3109/09546634.2010.496444. リンク
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    7. [7]. M. L. Leuenberger, M. W. Mulas, T. R. Hata, M. P. Goldman, R. E. Fitzpatrick, J. M. Grevelink. Comparison of the Q-switched alexandrite, Nd:YAG, and ruby lasers in treating blue-black tattoos. (Dermatologic Surgery, 1999). doi:10.1046/j.1524-4725.1999.08122.x. リンク
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    9. [9]. Pier Luca Bencini, Simone Cazzaniga, Athanasia Tourlaki, Michela Gianna Galimberti, Luigi Naldi. Removal of Tattoos by Q-Switched Laser: Variables Influencing Outcome and Sequelae in a Large Cohort of Treated Patients. (Archives of Dermatology, 2012). doi:10.1001/archdermatol.2012.2946. リンク
    10. [10]. Pooja Gurnani, Natalie Williams, Ghadah Al-Hetheli, Olivia Chukwuma, Rebecca Roth, Francisco Fajardo, Keyvan Nouri. Comparing the efficacy and safety of laser treatments in tattoo removal: A systematic review. (Journal of the American Academy of Dermatology, 2022). doi:10.1016/j.jaad.2020.07.117. リンク

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