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タトゥー除去が4回目から薄くならない?停滞期に知っておきたいこと
2026年11月2日

数字で見る、序盤とその後の変化の差
1回目と2回目では目に見えて薄くなったのに、4回目あたりで「前回と変わらない」ように見える。そう感じて、この記事を開いた方もいると思います。ただ、何回目から必ずペースが落ちる、という決まった経過があるわけではありません。インクの量や色、入っている部位、照射の間隔などによって、変化の出方は人によって大きく異なります。
それでも、序盤の変化が大きく、そのあと1回ごとの変化が小さくなる例は研究にも出てきます。64人・75個のタトゥーを追った研究では、黒く濃い34個の除去率(中央値)は1回目後で30%、2回目後で40%でした[2]。1回目で30%進んだのに対し、2回目で上乗せされたのは10ポイントです。灰色の41個では、1回目後が50%、2回目後が70%でした[2]。
最終的に、黒く濃い群は最大7回の治療で中央値75%、灰色群は最大5回で中央値90%に達しています[2]。352人を解析した別の研究では、治療を重ねた時点ごとの累積除去成功率が、10回時点で47.2%、15回時点で74.8%と報告されています[1]。この研究では全員が同じ回数の治療を受けたわけではなく、10回時点の成功率はまだ半数に届いていません[1]。タトゥー除去は、数回で終わる前提より、長い期間をかけて進める治療と考えておくほうが実態に近いです。
タトゥーが消えにくいのは細胞がインクを抱えているから
タトゥーが何年も残る仕組みについて、マウスを使った研究は、皮膚の中の細胞がインクを抱え込んでいるためだと示しています[4]。この研究では、色素を取り込んで保持している細胞として、真皮(皮膚の深い層)にいるマクロファージが確認されました[4]。別のマウス研究では、マクロファージだけでなく線維芽細胞にも色素粒子が見つかっており、保持に関わる細胞は複数あると考えられています[9]。
この研究では、マクロファージを取り除くと、色素はいったん細胞の外へ出ました。しかし、近くに来た別のマクロファージがまた色素を取り込み、タトゥーは消えませんでした[4]。著者らは取り込み・放出・再取り込みのくり返しが、タトゥーが長く残る仕組みを説明するとしています[4]。インクが細胞から細胞へ、バケツリレーのように受け渡されているイメージです。
レーザーの光は、このインクの粒子に作用して細かく砕きます。ラットの黒色タトゥーに4種類のレーザーを1回ずつ当てて比べた研究では、色素粒子の大きさとマクロファージの集まり方が、除去の効果と相関していました[5]。著者らはマクロファージの集まりが、レーザー後に色素を処理するうえで重要な役割を担うと結論づけています[5]。消えるかどうかには、レーザーの力だけでなく、体の側の処理も関わっています。
皮膚のインクの一部はリンパ節へ運ばれる
では、皮膚の中のインクはどこへ行くのでしょうか。亡くなった方から提供された皮膚とリンパ組織を調べた研究では、有機顔料、重金属、二酸化チタンが、皮膚から近くのリンパ節へ移動していることが示されました[6]。この研究は死後に提供された組織を調べたもので、レーザー照射後にインクが運ばれる過程を直接追跡したものではありません[6]。リンパ節は、体の中を流れるリンパ液の通り道にある「関所」のような場所です。
この研究では、有機顔料の粒子の大きさには幅があり、小さい粒子ほどリンパ節へ届きやすい傾向がありました[6]。運ばれ方としては、血液やリンパ液に乗って流れる場合と、免疫細胞に取り込まれてから運ばれ、リンパ節にたまる場合が図で示されています[6]。
レーザー除去の効果が見た目に表れるまでには、時間がかかることがあります。2人のボランティアでレーザー除去の経過を光学的に測った研究では、測定が各照射の4〜20週間後に行われていました[3]。参加者は2人と小規模ですが、照射直後ではなく期間をあけてから変化を確認した例として参考になります。前回の照射から日が浅いうちに「変わらない」と判断するのは、少し早いかもしれません。
ペースが落ちて見える理由は一つではありません
薄くなる速さを左右する条件は、研究でいくつも挙げられています。352人を解析した研究では、効果の出にくさに関連する条件がいくつも示されています[1]。色素の密度が高い場合、黒と赤以外の色、30 cm²を超える大きさ、足や脚の部位、入れてから36か月を超えたタトゥー、8週間以下の照射間隔などです[1]。同じ回数でも、タトゥーの条件しだいで進み方が変わります。
インクの量も大きく影響します。前述の64人の研究で著者らは、皮膚にたまったインクの量によって効果が左右され、塗りつぶしでインクが多いタトゥーほど照射回数が必要だったと結論づけています[2]。また、色素の種類や配合によっては、想定した波長(レーザーの光の色)に反応しにくく、複数の波長を使う必要がある場合があるとされています[7]。
インクの残る位置が変わっていく様子を示した報告もあります。2人を対象にした小規模な研究では、3 J/cm²以上で照射を重ねると、インクの量が少しずつ減り、皮膚の表面から見たタトゥー層の深さが増していきました[3]。測定結果は見た目の退色ともよく一致しています[3]。対象は2人だけですが、回数を重ねるうちに残るインクの状態が変わっていくことを示した例です。
薄く見えない原因がインクとは限りません
変化が止まったように見えても、その色がすべて残ったインクとは限りません。レーザー除去の経過について、これまでの研究をまとめた論文では、Qスイッチレーザーのあとに出る一時的な炎症後色素沈着が、インクの残りと間違えられる場合があると述べています[7]。炎症後色素沈着とは、肌の炎症のあとに残る茶色っぽいしみのことで、日焼けのあとの色に近いものです。
照射によってインクの色が黒く変わる例もあります。白、肌色、ピンクから赤の美容タトゥーで、短パルスレーザーの照射直後に黒く変わった5症例が報告されています[8]。5症例のうち3症例は追加のレーザーで黒くなったインクを除去できましたが、2症例はレーザーでは取れず、外科的な切除が必要でした[8]。著者らは少なくとも一部で酸化鉄の変化が関わる可能性を述べています[8]。
このように「薄くならない」の中身はインクの量や色、色素沈着、インクの変色など、いくつかの可能性があります。自分の目で見分けるのは簡単ではありません。気になる部分があるときは、写真を持参して診察で肌の状態を見てもらうと安心です。
照射の間隔は短くすれば早く終わるわけではありません
変化が小さく見えると、間隔を詰めて回数を増やしたくなるかもしれません。1か月間隔の照射はマクロファージの働きを妨げる可能性があると、タトゥー除去に携わる専門家がこれまでの研究をまとめた論文で指摘しています[7]。同じ論文には、多くの皮膚科医が少なくとも8週間の間隔を勧めているとも記されています[7]。352人を解析した研究でも、8週間以下の間隔は効果の出にくさと関連しています[1]。この研究自体も、照射の間を6週間以上あけて行われています[1]。
体がインクを運び出すには時間が必要です。間隔をあけることは、遠回りではなく、体の処理が進むのを待つ期間だと考えてください。見通しを立てるときは、回数だけでなく期間で考えると現実的です。仮に8週間ごとに10回受けると、それだけで80週、およそ1年半になります。実際の間隔は、肌の回復の具合を見ながら医師と決めていきます。
停滞期こそ経過を記録しておく
写真は毎回同じ場所、同じ時間帯、同じ明るさで撮ります。自然光やいつも使う照明など、撮影条件を毎回そろえることを心がけてください。腕や脚からの距離と角度もそろえましょう。照射直後は赤みや腫れが出ることがあるため、肌が落ち着いてから撮ると状態を確認しやすくなります。
写真と一緒に、日付と何回目の照射かをメモしておきます。黒、灰色、ほかの色など、色ごとの残り方も書き添えると役立ちます。赤み、水ぶくれ、茶色っぽいしみ、黒っぽく変わった部分などの肌の反応も記録しておきましょう。前の章で紹介したように、これらは「薄くならない」の原因を見分ける手がかりになります。
比べるときは、前回の写真だけでなく、治療前の写真と並べてください。黒く濃いタトゥーの研究では、1回目で30%進んだのに対し、2回目の上乗せは10ポイントでした[2]。1回ごとの差が小さくなるほど、前回とだけ比べると変化に気づきにくくなります。最初の状態からどこまで来たかを見ると、治療の進み具合を実感しやすくなります。

停滞期に医師へ確認したいこと
変化が小さいと感じたら、遠慮せず診察で相談してください。まず聞いておきたいのは、今残って見えているものが何かです。インクの量が多い部分なのか、波長に反応しにくい色なのか、炎症後色素沈着なのかで、次の対応は変わります[2, 7]。色によっては、使う波長や設定を変える必要があるかどうかも確認しましょう[7]。
次に、照射の間隔と、これからの見通しを聞いておきます。大きさ、部位、入れてからの年数、色素の密度など、効果に関わる条件は研究でも示されています[1]。自分のタトゥーがどの条件に当てはまるかを知っておくと、回数と期間の見通しを立てやすくなります。白、肌色、ピンク系のインクが入っている場合は、照射で黒く変わる可能性についても事前に聞いておくと安心です[8]。
inklinic では、医師が肌とタトゥーの状態を診察し、医師の管理のもとで照射を行っています。照射の間隔も医師が判断します。記録した写真やメモがあれば、診察の際にご持参ください。今後の回数や間隔の見通しについては、診察でご相談ください。

よくある質問
タトゥー除去は4回目から必ず薄くなりにくくなりますか?
何回目から必ずペースが落ちる、という決まった経過はありません。インクの量や密度、色、部位、照射の間隔などによって、変化の出方は人によって異なります。黒く濃いタトゥーを追った研究では、1回目後の除去率(中央値)が30%、2回目後が40%で、序盤のあとは1回ごとの変化が小さくなっていました。
皮膚の中のインクはどこへ行くのですか?
皮膚の中では、マクロファージという免疫細胞がインクを取り込んでいます。ヒトの組織を調べた研究では、タトゥーの顔料が皮膚から近くのリンパ節へ移動していることが示されました。体の処理には時間がかかるため、効果は照射直後ではなく、次の照射までの期間を含めて判断します。
薄くなっていないように見えるのは、インクが残っているからですか?
インクが残っている場合もありますが、それだけではありません。レーザー後の一時的な炎症後色素沈着(茶色っぽいしみ)が、残ったインクと見分けにくいことがあります。白や肌色、ピンク系のインクが照射で黒く変わる例も報告されています。どれに当たるかは診察で肌を見て判断します。
早く終わらせたいので、照射の間隔を詰めてもよいですか?
間隔を詰めれば早く消えるとは限りません。8週間以下の間隔は効果が出にくいことと関連したという報告があり、多くの皮膚科医は少なくとも8週間あけることを勧めています。間隔は肌の状態を見ながら医師と決めてください。
停滞期に自分でできることはありますか?
同じ条件で写真を撮り、日付・回数・肌の反応を記録しておくことです。前回だけでなく、治療前の写真と並べて比べると変化をつかみやすくなります。記録は診察の際に持参いただくと、経過の相談に役立ちます。
参考文献
- [1]. Pier Luca Bencini, Simone Cazzaniga, Athanasia Tourlaki, Michela Gianna Galimberti, Luigi Naldi. Removal of tattoos by q-switched laser: variables influencing outcome and sequelae in a large cohort of treated patients. (Archives of Dermatology, 2012). doi:10.1001/archdermatol.2012.2946. リンク
- [2]. Agata Mankowska, Wojciech Kasprzak, Zygmunt Adamski. Long-term evaluation of ink clearance in tattoos with different color intensity using the 1064-nm Q-switched Nd:YAG laser. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2015). doi:10.1111/jocd.12162. リンク
- [3]. Neža Golmajer Zima, Nina Verdel, Matjaž Lukač, Boris Majaron. Objective monitoring of laser tattoo removal in human volunteers using an innovative optical technique: A proof of principle. (Lasers in Surgery and Medicine, 2023). doi:10.1002/lsm.23720. リンク
- [4]. Anna Baranska, Alaa Shawket, Mabel Jouve, Myriam Baratin, Camille Malosse, Odessa Voluzan, Thien-Phong Vu Manh, Frédéric Fiore, Marc Bajénoff, Philippe Benaroch, Marc Dalod, Marie Malissen, Sandrine Henri, Bernard Malissen. Unveiling skin macrophage dynamics explains both tattoo persistence and strenuous removal. (Journal of Experimental Medicine, 2018). doi:10.1084/jem.20171608. リンク
- [5]. Xiao-Jie Du, Hong-Mei Zhou, Zhao Wang, Jing Liu, Jia-Feng Wang, Dong Li, Ting-Ting Wu, Bin Chen, Wei-Hui Zeng. Comparative study of 1064 nm nanosecond, 1064 nm picosecond, 755 nm, and 595 nm lasers for tattoo removal: An essential role by macrophage. (Lasers in Surgery and Medicine, 2022). doi:10.1002/lsm.23535. リンク
- [6]. Ines Schreiver, Bernhard Hesse, Christian Seim, Hiram Castillo-Michel, Julie Villanova, Peter Laux, Nadine Dreiack, Randolf Penning, Remi Tucoulou, Marine Cotte, Andreas Luch. Synchrotron-based ν-XRF mapping and μ-FTIR microscopy enable to look into the fate and effects of tattoo pigments in human skin. (Scientific Reports, 2017). doi:10.1038/s41598-017-11721-z. リンク
- [7]. William Kirby, Cynthia L. Chen, Alpesh Desai, Tejas Desai. Causes and recommendations for unanticipated ink retention following tattoo removal treatment. (Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2013). リンク
- [8]. R. Rox Anderson, R. Geronemus, S. L. Kilmer, W. Farinelli, R. E. Fitzpatrick. Cosmetic tattoo ink darkening. A complication of Q-switched and pulsed-laser treatment. (Archives of Dermatology, 1993). doi:10.1001/archderm.129.8.1010. リンク
- [9]. Helen Strandt, Odessa Voluzan, Tanja Niedermair, Uwe Ritter, Josef Thalhamer, Bernard Malissen, Angelika Stoecklinger, Sandrine Henri. Macrophages and Fibroblasts Differentially Contribute to Tattoo Stability. (Dermatology, 2021). doi:10.1159/000506540. リンク
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