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アートメイクは何年もつ?「1〜3年」という目安の根拠をたどる
2026年8月24日

「1〜3年」は研究の数字ではなく、案内の目安
「アートメイクの色持ちは1〜3年」。複数のクリニックが案内で使う目安です。実際、国内のあるクリニックは眉・リップ・アイラインの一般的な色持ちを1〜3年程度とし、年1回のリタッチを勧めています[6]。別のクリニックも、眉のメイク効果は平均して1〜3年ほど続くと説明しています[7]。ただ、一次研究が示す数字は部位や条件ごとに違います。「アートメイクは一律に1〜3年で薄くなる」という説明は、既存の一次研究から直接導ける結論ではありません。
では、研究は実際に何を測ってきたのでしょうか。アイラインを2年間追跡した報告[1]、眉を含む132人を約24か月観察した報告[2]、眉のマイクロブレーディングを12〜18か月とするレビュー[5]、マウスで56日間の組織変化を見た実験[4]。部位も色素も期間もばらばらです。この記事では、それぞれの研究が「何を・誰に・どれだけの期間」測ったのかを、数字つきで見ていきます。
アイラインは「2年間、色素脱失なし」という報告がある
アートメイクの経過を追った古典的な報告が、1984年のAngresによる論文です[1]。まつ毛の生え際にアーストーン、つまり土系の色の色素を入れる手技を報告したもので、250眼瞼を2年間追跡しました。結果は、有害事象も色素脱失もなかった、というものです[1]。アイラインに関しては、2年たっても色が失われなかったという記録が残っているわけです。「1〜3年で薄くなる」という目安をそのまま当てはめると、少し話が合いません。
ただし、この報告の対象はアイラインだけです。眉やリップの持続期間は測定されていません[1]。部位が違えば、同じ結果がそのまま当てはまるとは限りません。これが、持続期間を考えるときの出発点になります。
眉を含む132人の約24か月、早期退色は2例
韓国の形成外科医らは、2002年9月から2005年までに微小色素注入を行った132人、男性4人・女性128人の経過を報告しています[2]。部位は眉が132例、まつ毛部が68例で、112例は二重まぶた手術の後に施術されました。約24か月の観察で、重い炎症や肉芽腫、皮膚壊死は132例の中で報告されませんでした。退色については、施術初期の症例で早期退色が2例あったと記されています[2]。
満足度も報告されており、二重まぶた手術後の112例では、術後3か月時点で105例が満足と回答しました[2]。一方で注意したい点があります。この論文の冒頭には、化粧効果が「約5年」続くとの記載があります。しかし、これは132人を5年間追跡して測った結果ではありません[2]。使用色素は当初、複数社の製品でした。2004年3月以降はWELCOS Micropigmentが使われ、単針または3針が用いられました[2]。色素も器具も、現在の日本の施術と同じとは限らない点は覚えておきたいところです。
マイクロブレーディングは「12〜18か月」、ただし条件は示されていない
眉のマイクロブレーディングを扱った2021年のレビューでは、結果は半永久的で、12〜18か月持続すると記載されています[5]。マイクロブレーディングは、手動の器具に細い針を重ねて付け、色素を乳頭真皮という皮膚の浅い層まで入れる手技です[5]。マシンを使う一般的なアートメイクとは、道具も色素の入れ方も異なります。
この12〜18か月という数字には注意点があります。このレビューには、数字の基になった対象者数、使用色素、追跡方法、退色の判定基準が示されていません[5]。また、対象はあくまで眉のマイクロブレーディングです。マシン施術やリップ、アイラインにそのまま当てはめることはできません[5]。同じ「眉」でも手技が違えば数字の意味が変わる、という例と言えます。
マウス実験が示した、タトゥーインクとの残り方の差
2024年には、退色の仕組みに一歩踏み込んだ動物実験が発表されました[4]。SKH-1というマウスを10匹ずつの2群に分け、背中に茶色のアートメイク用色材、または黒色のボディタトゥーインクを入れて56日間観察したものです。アートメイク側にはNouveau Contour社の色材とデジタル式の専用機器が使われました[4]。
結果、アートメイク色材の到達深さは、施術後1日で0.04mm、7日で0.19mm、56日で0.53mmと変化しました[4]。56日後には、使用された茶色のアートメイク用色材の粒子が大幅に減っていました。一方、黒色のタトゥーインクの粒子はより豊富で、安定して残っていました[4]。これは、この2種類の色材をマウスの背中で56日間比較した結果であり、ヒトの見た目の退色速度や、すべてのアートメイク色材がタトゥーインクより早く薄くなることまで示すものではありません[4]。
ただし、これはマウスの背中での56日間の話です。著者らは本文で、アートメイクは1〜2年で薄くなると述べています。しかしこれは、人の顔で1〜2年の経過を直接測った結果ではありません[4]。動物の種類、部位、観察期間、色材のどれもがヒトの施術と異なります。仕組みのヒントにはなりますが、「あなたの眉が何年もつか」の答えにはならないのです。
1,352人の大規模調査でも、持続期間は測られていない
2021年には、日本から眉とアイラインの合併症と満足度を調べた大規模な報告が出ています[3]。2016年11月から2020年3月に施術を受けた対象者から集めた質問票の回答は1,352件で、内訳は眉のみ1,109件、アイラインのみ164件、両方が79件でした[3]。質問票は施術メニューごとに配布された無記名式で、同一人が複数回答したかどうかは分かっていません。そのため、1,352件がそのまま1,352人を意味するとは限りません[3]。使われた色素はBioTouch社製で、黒・赤・黄の酸化鉄とカーボンブラックを含む無機色素でした[3]。
ただし、この研究の目的は合併症と満足度の把握であり、持続期間や退色率は評価されていません[3]。施術から質問票回答までの期間は中央値で15日でした。6か月以上追跡できたのは1,352件中110件でした[3]。著者ら自身も、アートメイクの安全性や仕上がりに関する医学研究は少なく、十分な医学的エビデンスがないと記しています[3]。1,000件を超える回答を集めた調査でさえ、色が何年もつかは主題になっていないのです。
クリニックの案内と研究、数字のズレをどう見るか
ここで国内クリニックの案内に戻りましょう。あるクリニックは、施術後は肌のターンオーバーとともに色が抜けていくが完全には消えないとし、色持ちの目安を1〜3年、リタッチを年1回と案内しています[6]。別のクリニックは、1回の施術での色素定着率を約30%とし、4週間以上あけて2〜3回の施術で定着させると説明しています[7]。1〜3年で徐々に薄くなるものの、完全には消えないという点は両者に共通しています[6, 7]。
研究の数字と見比べると、「薄くなる時期」は報告ごとに幅があります。ただし、[1]も[4]も、ヒトの眉・リップ・アイラインで色素が最終的に完全に消えるかどうかを検証した研究ではありません[4]。アイラインでは2年間の観察期間内で色素脱失がなかったという報告があり[1]、マウス実験では56日間の観察で色材粒子の減少が見られつつも残存していました[4]。これらはあくまで観察期間内の結果であり、クリニックの案内にある「完全には消えない」という説明は、研究で確立した結論というより、臨床上の経験に基づく目安として受け止めるのが実情に近いでしょう。一方、「数年で跡形もなく消えるから気軽に試せる」という受け止め方も、正確とは言えません。薄く残る可能性を前提に、デザインを選ぶことが大切です。
受ける前に決めておきたいこと
ここまでの数字をまとめます。アイラインは250眼瞼を2年間追跡して色素脱失なしという報告があります[1]。眉を含む132人の約24か月の観察では、早期退色は2例でした[2]。眉のマイクロブレーディングは12〜18か月とするレビューがあり[5]、国内クリニックは1〜3年を目安に案内しています[6, 7]。部位、色素、器具、施術回数が違えば数字も違う。「何年もつか」に一つの正解はありません。
だからこそ、受ける前に決めておきたいのはデザインとの付き合い方です。流行の眉の形は数年で変わりますが、色は薄くなっても残る可能性があります。長く付き合える形を選び、リタッチを前提に計画を立てる。それが、研究と案内の両方から導けるいちばん現実的な結論です。色素の種類や施術回数の計画、リタッチの間隔など、個別の疑問はカウンセリングでご相談ください。あなたの肌質や希望に合わせた見通しを、その場でご案内できます。
よくある質問
アートメイクは何年もちますか?
国内クリニックは1〜3年程度を目安に案内しています。ただし研究の数字は部位や条件によって異なり、アイラインでは2年間色が失われなかった報告もあります。部位・肌質・色素で個人差が大きいと考えてください。
アートメイクは完全に消えますか?
完全には消えず、薄く残る場合があると案内されています。跡形もなく消える前提でデザインを選ぶのは避け、数年単位で長く付き合える形を選ぶことをおすすめします。
1回の施術で色は定着しますか?
1回の施術での色素定着率を約30%と案内するクリニックがあり、4週間以上あけて2〜3回に分けて定着させる進め方が一般的です。回数の計画はカウンセリングで相談できます。
タトゥーとアートメイクでは色の残り方が違いますか?
マウスを使った56日間の実験では、タトゥーインクの粒子の方が豊富で安定して残り、アートメイクの色材は大幅に減っていました。アートメイクの方が薄くなりやすい傾向を組織レベルで支える結果です。
参考文献
- [1]. G. G. Angres. Eye-liner implants: a new cosmetic procedure.. (Plastic and Reconstructive Surgery, 1984). doi:10.1097/00006534-198405000-00022. リンク
- [2]. Young Joon Jun, Tae Hyung Kim, Jeong Geun Hong. Permanent Makeup with Micropigmentation. (Journal of the Korean Society of Aesthetic Plastic Surgery, 2006). リンク
- [3]. Shoichi Tomita, Katsuya Mori, Hitomi Yamazaki, Kaori Mori. Complications of permanent makeup procedures for the eyebrow and eyeline. (Medicine, 2021). doi:10.1097/MD.0000000000025755. リンク
- [4]. Eleni Andreou, Sophia Hatziantoniou, Efstathios Rallis, Vasiliki Kefala. Why Permanent Makeup (PMU) Is Not a Lifetime Application. (Cosmetics, 2024). doi:10.3390/cosmetics11050160. リンク
- [5]. Manjot Kaur Marwah, Amit S. Kerure, Gurjot S. Marwah. Microblading and the Science Behind it. (Indian Dermatology Online Journal, 2021). doi:10.4103/idoj.IDOJ_230_20. リンク
- [6]. アートメイク(医療アートメイク). (アサイクリニック心斎橋本院, 2026). リンク
- [7]. 眉のアートメイク. (肌のクリニック 高円寺院・麹町院, 2026). リンク
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