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    タトゥー除去に健康保険は使える?全額自己負担になる理由

    2026年9月21日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    タトゥー除去に健康保険は使える?全額自己負担になる理由

    まず結論、タトゥー除去は原則として全額自己負担です

    「タトゥーを消したいけれど、健康保険は使えるのか」。除去を考える人がまず気にするのは、この費用の問題です。結論から言うと、入れ墨を消すためのレーザー照射は、原則として健康保険の対象になりません。健康保険は病気やけがの治療のために使う制度で、見た目を整える目的の施術は対象外とされているからです[2, 8]。そのため、費用は全額自己負担、いわゆる自由診療になります[3]。

    ただし、除去にまつわるすべてが自己負担というわけでもありません。健康保険法は、療養の給付の対象を「疾病又は負傷」と定めています[1]。除去のあとに感染や出血などの症状が生じることがあります。その治療に医学的な必要性が認められる場合は、治療そのものに保険が使われることがあります[1, 7]。これは除去の費用が保険に切り替わるのではなく、生じた症状に対する別の治療として扱われるという意味です。本人の意思で入れた入れ墨を消すための照射そのものは、美容目的の施術として自由診療で行われるのが一般的です[1]。この記事では、法律と厚生労働省の資料に沿って、どこまでが保険で、どこからが自費なのかを順に説明します。

    明るいクリニックの待合で、タトゥーの入った前腕を膝に置き座る女性

    健康保険が支払う「療養の給付」の中身

    健康保険のしくみを定めているのは健康保険法です。その第63条第1項は、被保険者の「疾病又は負傷」について療養の給付を行うと定めています[1]。つまり、給付の出発点は病気やけがであり、それ以外の理由で受ける診療は最初から枠の外にあります。給付の内容としては、診察、薬剤や治療材料の支給、処置や手術その他の治療、在宅療養の管理や看護、入院とその看護が並びます[1]。どれも「治す」ための行為である点が共通しています。

    協会けんぽの案内もこの条文に沿っています。療養の給付は、病気やけがをしたときの治療を対象に行うものだと説明し、日常生活に何ら支障がないのに受ける診療の例として「美容整形など」を挙げています[2]。KDDI健康保険組合も同じ趣旨で、健康保険の対象は法律で定められており、病気やけがとみなさないものには使えないと案内しています[8]。健康保険を「医療費が3割になるカード」と考えていると意外に思えますが、対象になるのは治療だけ、と覚えておくと分かりやすいです。

    健康保険法第63条の「療養の給付」を中心に置いた図。左側に「疾病又は負傷」という入口を示し、そこから診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療、在宅療養

    美容目的の施術が保険から外れる理由

    では、タトゥー除去はどちらに入るのでしょうか。厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」は、美容医療を「身体各部の形状や表面を美しくする目的で行うもの」と説明しています[4]。皮膚に入った色素を消し、見た目を元に戻すレーザー照射は、この説明に沿って美容目的の施術として扱われます。同検討会は、美容医療は一般的に保険が適用されない自由診療であるとも述べています[3]。

    自由診療であることには、費用の負担以外にも意味があります。厚生労働省の資料は、美容医療は自由診療であるため、健康保険法や療養担当規則などのルールの対象外になると説明しています[3]。保険診療では、厚生労働省が定める診療報酬点数表に従って診療が行われ、患者は保険証の提示で決まった自己負担割合を支払います[7]。自由診療にはこの点数表がなく、価格は医学的に妥当な治療内容を医師が提案したうえで、患者との間で自由に取り決められます[4]。

    医療機関側の案内も同じです。堺市立総合医療センターの説明書では、美容目的や予防目的など、病気の治療を目的としない診療は原則として健康保険の対象外で、全額自己負担の自費診療になるとしています[1, 7]。KDDI健康保険組合は、美容整形、健康診断、予防注射、正常な妊娠・出産を対象外の例として並べています[8]。入れ墨の除去も、見た目を整える目的で受ける施術として、これらと同じ扱いになります。

    同じレーザーでも保険が使える病気との違い

    「同じレーザーなのに、保険が使えることもあると聞いた」という声もあります。これは正しく、本記事の執筆時点の診療報酬点数表には「皮膚レーザー照射療法」という項目があります[5]。ただし、この項目は単なる美容を目的とした場合には算定できないと明記されています[5]。算定できるのは、決められた病気に対して、決められた種類のレーザーを使った場合だけです。留意事項は改正されることがあるため、最新の内容は医療機関で確認してください。レーザーという道具が同じでも、何を治すために当てるのかで、保険の扱いが分かれます。

    具体的には、色素レーザーは単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症に対して行った場合に算定するとされています[5]。Qスイッチ付ルビーレーザーやルビーレーザーは、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症、扁平母斑などが対象です[5]。Qスイッチ付アレキサンドライトレーザーとQスイッチ付ヤグレーザーも、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着症などを対象として記載されています[5]。いずれも、皮膚の疾患として診断される状態に対する治療です。

    診療報酬の留意事項には、算定対象の疾患として「外傷性色素沈着症」などが挙げられています[5]。この一覧に、本人の意思で入れる通常のタトゥーは含まれていません[5]。同じQスイッチレーザーを使っても、一覧にある疾患の治療でなければ算定の対象になりません[5]。入れ墨を消す目的の照射は、美容目的の施術として自由診療で行われるのが一般的です。「レーザーだから保険が使えるはず」という思い込みは、ここで分かれ道になります。

    二列の比較図。左列に「保険で算定できる皮膚レーザー照射療法」として、色素レーザー(単純性血管腫・苺状血管腫・毛細血管拡張症)、Qスイッチ付ルビーレーザー等(太田

    医師が「必要」と判断すれば保険になるのか

    「医師が医学的に必要と認めれば、保険で受けられるのでは」と考える人もいます。しかし、保険で算定できるかどうかは、医師個人の判断だけで決まる仕組みではありません。皮膚レーザー照射療法は、対象となる疾患とレーザーの種類が診療報酬の留意事項で具体的に定められています[5]。医師がどれだけ「消したほうがよい」と考えても、医師の判断だけでこの枠が広がることはありません。入れ墨の除去そのものは、美容目的の照射として扱われます。

    一方で、除去のまわりで起きる別の問題は、話が変わります。健康保険法は、療養の給付の対象を「疾病又は負傷」に定めています[1]。たとえば照射後の傷が感染した場合、その治療に医学的な必要性が認められれば、保険が適用されることがあります[1, 7]。ただし、これは症状が生じた場合の治療に限った話です。色素を消す照射そのものの費用が保険に切り替わるわけではありません。

    タトゥーのある皮膚にかゆみや腫れが出ている、色が変わって気になる、といった症状があるときは、まず医師の診察で何が起きているかを確かめることが先です。症状の診察と、色素を消すための照射は、目的も会計も別のものとして考える必要があります。どこまでが症状の治療で、どこからが除去なのかは、医療機関で診てもらったうえで説明を受けてください。除去の相談では、気になる症状もあわせて医師にお伝えください。

    窓口で保険証を出すと何が起きるのか

    保険診療の会計では、マイナ保険証や資格確認書などで資格確認を行います[9]。資格確認後は、診療報酬点数表で計算された費用のうち、自己負担割合に応じた金額だけを支払います[2, 7]。自己負担割合は年齢や所得によって異なり、2割または3割などに分かれます[2]。この計算は、保険が使える診療にしか当てはまりません。保険適用外の診療では、資格確認を行っても自己負担割合は適用されず、原則として全額を自分で支払います[7, 9]。

    つまり、タトゥー除去そのものの会計では、資格確認をしても費用の割合が下がることはありません。自由診療の部分は点数表に基づく計算が行われないため、資格確認をしても結果は変わりません[7]。一連かつ同一日の診療のなかで、保険診療と保険適用外の診療を組み合わせることは、制度上認められる場合を除いて原則できません[7]。会計の前に、費用の全額と、保険診療の対象になる部分があるかどうかを、医療機関に確かめておくと安心です。「資格確認をすれば安くなるはず」と期待して窓口で戸惑うより、最初から自由診療として受け止めておくほうが、気持ちの面でも楽です。

    万一、保険が使えない施術を誤って保険で受けてしまった場合はどうなるでしょうか。KDDI健康保険組合は、その場合は健康保険組合へ届け出て、健康保険から支払われた費用を返還する必要があるとしています[8]。後から返還を求められれば、結局は全額を負担することになり、手続きの手間も増えます。除去を受ける前に「これは自由診療である」と理解しておくことが、いちばん確実な備えです。

    会計の流れを上下二段で比較するフロー図。上段「保険診療」:保険証の提示 → 診療報酬点数表で計算 → 自己負担割合の金額を支払う。下段「自由診療(タトゥー除去)

    自由診療の費用はどう決まるのか

    保険が使えないとなると、次に気になるのは「では費用はいくらか」です。自由診療の価格には、保険診療のような全国一律の点数表がありません。厚生労働省の検討会報告書は、価格を含む診療契約の内容は、医学的妥当性のある治療内容を医師が提案したうえで、患者との間で自由に取り決められると説明しています[4]。医療機関ごとに価格が違うのは、この仕組みによるものです。だからこそ、受ける前の説明が大切になります。

    説明については、厚生労働省が2013年に出した通知が基準になります。美容医療などの自由診療では、施術前に費用や回数、範囲を説明しなければなりません。保険診療での実施の可否や解約条件も、施術を受ける人に説明する必要があるとされています[6]。また、施術の効果には個人差があることも、施術前に直接説明しなければならないとしています[6]。費用に含まれる回数や範囲は、契約ごとに異なります。「1回の料金」だけを聞いても総額は見えません。回数と範囲まで含めて説明を受けるのが、この通知が求める姿です。

    上野・東京で除去を考える人が最初に確かめること

    上野や東京都内でタトゥー除去のクリニックを探すとき、料金表の数字だけを見比べても、費用の全体像はつかめません。最初に確かめたいのは、保険が使えるかどうかを含めた費用の考え方です。厚生労働省の通知に沿って、費用の総額、その費用で受けられる回数と範囲、保険診療の可否、解約条件について、施術前に説明を受けてください[6]。これらの点が明確に語られるかどうかは、医療機関を選ぶときの目安にもなります。

    効果に個人差があることも、事前に説明されるべき項目です[6]。色素の色や深さ、皮膚の状態によって、照射への反応は人それぞれ違います。「必ずこの回数で消える」と言い切る説明よりも、個人差を前提にして見通しを示す説明のほうが、実際の経過とのずれが小さくなります。費用の話と効果の話は切り離せません。回数が増えれば総額も変わるからです。総額の目安や、途中でやめた場合の扱いまで聞いておくと、後悔が減ります。

    健康保険は病気やけがの治療のための制度で、タトゥー除去は原則としてその外にあります[1, 2]。ただし、症状の治療のように医学的な必要性がある部分には保険が使われる余地があります[1, 7]。この線引きを知っていれば、窓口で戸惑うことも、後から返還を求められることもありません。費用と回数の見通しは、カウンセリングでご案内します。気になることは、予約時にご相談ください。

    よくある質問

    タトゥー除去に健康保険は使えますか?

    原則として使えません。健康保険は病気やけがの治療を対象とする制度で、見た目を整える目的の美容医療は保険適用のない自由診療とされています。タトゥー除去の費用は全額自己負担になります。

    医師が必要だと判断すればタトゥー除去も保険になりますか?

    医師個人の判断だけで保険が使えるようになる仕組みではありません。皮膚レーザー照射療法は単なる美容目的では算定できず、算定できる疾患とレーザーの種類が診療報酬の留意事項で具体的に定められています。

    タトゥー除去で保険が使われる場面はまったくないのですか?

    美容医療のあとに感染や出血などの合併症が起き、その治療に医学的な必要性が認められる場合は、その部分に保険が適用されることがあります。ただし色素を消す照射そのものの費用が保険に切り替わるわけではありません。

    窓口で保険証を出せば3割負担になりますか?

    なりません。保険適用外の診療では、保険証を提示しても自己負担割合は適用されず、原則として全額自己負担です。誤って保険で受けた場合は、健康保険組合へ届け出て支払われた費用を返還する必要があります。


    参考文献

    1. [1]. 日本国政府. 健康保険法. (e-Gov法令検索, 1922年(令和8年4月1日施行版)). リンク
    2. [2]. 全国健康保険協会. 療養の給付. (全国健康保険協会(協会けんぽ), 確認時点の掲載ページ). リンク
    3. [3]. 厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」. 小括(美容医療に関する制度や規制の状況). (厚生労働省, 2024年). リンク
    4. [4]. 厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」. 「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書. (厚生労働省, 2024年). リンク
    5. [5]. 厚生労働省保険局医療課. 令和8年度診療報酬改定に伴う実施上の留意事項について(医科診療報酬点数表に関する事項). (厚生労働省, 2026年). リンク
    6. [6]. 厚生労働省医政局長. 美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について. (厚生労働省, 2013年). リンク
    7. [7]. 堺市立総合医療センター. 保険診療および保険適用外診療に関する説明書. (堺市立総合医療センター, 2026年). リンク
    8. [8]. KDDI健康保険組合. 健康保険が使えない場合. (KDDI健康保険組合, 確認時点の掲載ページ). リンク
    9. [9]. 厚生労働省. 資格確認方法について. (厚生労働省, 2026). リンク

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