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タトゥー除去は何回で消える?Kirby-Desaiスケールの予測は当たるのか
2026年9月14日

回数を点数で見積もるスコアの中身
Kirby-Desaiスケールは、レーザー除去に何回かかるかを見積もるための点数表です。2009年に米国の皮膚科医らが発表しました[1]。肌の色のタイプ、タトゥーのある部位、インクの色、インクの量、瘢痕や組織の変化、重ね彫りの有無という6項目を点数にし、合計します[1]。その合計点が、そのまま治療回数の目安になるという考え方です[1]。医師の経験に頼っていた見積もりを、誰でも同じ手順で算定できるようにした点が特徴です[1]。
この点数表のもとになったのは、2004年7月から2008年8月に米国の1つのクリニックでレーザー除去を受けた18歳以上の100人です[1]。使われた機器はQスイッチNd:YAGレーザーとアレキサンドライトレーザーで、治療間隔は6〜8週間でした[1]。100人全員が満足できる除去に到達し、実際の治療回数は平均9.91回、最短3回から最長20回でした[1]。スコアの平均は9.87点で、回数の平均とほぼ同じ値になっています[1]。
この100人には、痛みや通院の難しさ、連絡が取れなくなったことなどで途中で治療をやめた人は含まれていません[1]。つまり、最後まで通い切った人だけを後から振り返ったデータです。治療を始めた全員がこの回数で終わる、という意味ではありません。スコアを見る際も、治療を完了した人のデータであることを踏まえる必要があります。
相関0.757は「的中率」ではありません
原著では、スコアと実際の回数の関係の強さをPearson相関係数という指標で示し、r=0.757、p<0.001でした[1]。相関係数は、点数が高い人ほど回数も多い、という傾向の強さを表す数字です。1に近いほど傾向がはっきりします。ただし、これは「何人中何人で予測がぴたり当たったか」を示すものではありません。原著も、予測回数と実回数が完全に一致した人数や割合は報告していません[1]。
身長と体重の関係を思い浮かべると分かりやすいでしょう。背が高い人ほど体重が重い傾向はあっても、身長から体重を1キロ単位で当てられるわけではありません。スコアと回数の関係もこれに似ています。点数が高い人はたしかに回数が多くなりやすい一方で、同じ点数でも早く消える人と長くかかる人がいます。0.757という数字は、その両方を含んだ「傾向の強さ」です。
2013年にはスロベニアの研究者が、10人で同じ比較をしました[2]。QスイッチNd:YAGレーザーを使い、黒には1064 nm、赤・紫・橙には532 nmと、色ごとに波長を変えて治療しました[2]。10人全員が満足できる除去に到達し、実際の回数は平均6回、範囲3〜11回、スコアの平均は7.46点でした[2]。相関係数はr=0.743で原著に近い値でしたが、この研究も完全一致の割合は報告していません[2]。
予測より少ない治療回数だった例
2024年に発表されたイスラエルの研究では、5年以上前に入れたプロのタトゥーを持つ28〜48歳の11人を対象にしました[4]。QスイッチNd:YAGレーザーで2〜3か月おきに治療し、回数は3〜8回、平均5.09回でした[4]。Kirby-Desaiスコアによる予測は平均9.9回で、実際の5.09回との差は統計的にも明らかでした(p<0.001)[4]。表に載った11人全員で、スコアの予測が実際の回数を上回っていました[4]。
この研究では、治療後の見え方の変化も長く追っています。最終治療から6か月時点で医師2人がつけた除去評価は平均75.5でしたが、平均4.36年後には93.6まで上がっていました[4]。これは写真をもとにした医師2人の視覚評価であり、体内でインクがどう処理されているかを直接測定したものではありません。11例中もっとも低い評価は77.5%で、黄色を含む下肢のタトゥーで見られました[4]。全例が完全に消えたことを示す結果ではない点に注意してください。
インドの研究では、さらに大きな差が出ました。単色黒のアマチュアタトゥーを持つ22人に、1回の来院で複数回照射するR0法を月1回行いました[3]。スコアの予測は論文中で平均9.7〜10.3回とされていますが、実際の治療は1〜4回で済み、22人中15人(68%)は1回か2回でした[3]。ただしこれは通常の単回照射とは違う方法です。スケールの精度そのものを測ったのではなく、照射の仕方が回数を大きく変えることを示す結果です[3]。
予測と実回数が一致したのは12例中1例
2025年に発表されたスイスの研究は、予測と実際の回数を1人ずつ並べて比べた点が特徴です[6]。黒いタトゥーを完全に除去した18〜62歳の116人を調べ、機器はピコ秒レーザーのPicoSure 755 nmでした[6]。実際の治療回数は平均6回、範囲2〜20回です[6]。別に選んだ12人のタトゥーで予測と実回数を比較した表では、Kirby-Desaiの予測と実回数が完全に一致したのは12例中1例だけでした[6]。
残る11例のうち、予測が実際より多かったのが9例、少なかったのが2例です[6]。予測のずれの大きさを示すRMSE(二乗平均平方根誤差)は、この12例全体で3.7回でした[6]。RMSEは個々の患者ごとの予測区間を示す数字ではなく、集団全体で見た誤差の大きさを表す指標です[6]。3.7回という値は、12例のうちぴたり一致したのが1例だけだったこととあわせて、予測が個人単位では大きくずれうることを裏づけています。
イタリアの545人を対象にした研究では、ピコ秒レーザーで治療した109人のテスト群でスコアの誤差を測りました[7]。Kirby-Desaiの6項目を単純に足し算すると、平均誤差(MAE)は2.14回、RMSEは2.47回、決定係数は-1.60でした[7]。同じ6項目を統計的に重みづけしたLasso回帰モデルでは、MAEが1.00回、RMSEが1.32回、決定係数は0.25でした[7]。ただしこのモデルは単施設の後ろ向きデータの中で作られ、同じデータの中で評価されたものです。外部の施設で検証されたわけではないため、項目の選び方が優れていると一般化することはできません[7]。
治療回数に関係するインクの密度と部位
では、必要な治療回数にはどんな条件が関係するのでしょうか。スイスの116人の解析で、回数にもっとも強く関係していたのはインクの密度でした[6]。密度が低いタトゥーは平均3.2回、高いタトゥーは平均9.0回と、およそ3倍の差があります[6]。部位も影響し、手や指は平均7.8回、上半身の体幹は平均4.3回でした[6]。一方で、肌の色のタイプ、年齢、性別、タトゥーの面積は、このデータでは有意な影響を示しませんでした[6]。
イタリアの545人の研究でも、新しく作ったピコ秒レーザー向けの予測モデルで影響が大きかったのは、タトゥーの様式とインクの密度でした[7]。Kirby-Desaiスケールにも「インクの量」の項目はありますが、密度と回数の関連が、そのまま予測誤差の原因を示すわけではありません。同じ「黒一色」でも、線画と塗りつぶしでは通う回数が大きく変わります。
スコアの6項目に入っていない条件も見逃せません。イタリア・ミラノの352人の観察では、喫煙や黒・赤以外の色、30 cm²を超える大きさが反応の低さと関係していました[5]。足や下腿にあること、作成から36か月超であること、高い色素密度も同様です[5]。8週間以下の短い治療間隔や、治療後の色調暗化も反応の低さと関係していました[5]。この352人で除去に成功した累積の割合は、10回後で47.2%、15回後で74.8%でした[5]。喫煙や治療間隔は本人が変えられる条件です。
検証の規模と対象のかたより
後続の検証は、人数が10人[2]、11人[4]、22人[3]、予測と実回数の比較が12例[6]、テスト群が109人[7]と、いずれも1つの施設で行われたものです。地域は米国、スロベニア、インド、イスラエル、スイス、イタリアと分かれています[1, 2, 3, 4, 6, 7]。肌の色のタイプも研究ごとに違います。インドの22人はタイプIV〜VI[3]、スイスの116人はタイプI〜IV[6]、イタリアの545人はタイプIIが7人、IIIが454人、IVが78人、Vが6人でした[7]。
機器と照射の仕方も同じではありません。原著はQスイッチのNd:YAGとアレキサンドライトで6〜8週間隔[1]、イスラエルはQスイッチで2〜3か月間隔[4]、インドは複数パスのR0法を月1回[3]、スイスとイタリアはピコ秒レーザーです[6, 7]。スケールは2004〜2008年のQスイッチ治療から作られています[1]。新しい機器や照射法でずれが出るとすれば、それはスケールの限界と治療の進歩の両方を映していると考えられます。
各研究の予測精度を、一つの数字にまとめて比べることはできません。人数も肌のタイプも機器も違うからです。[1]と[2]はスコアと実際の回数の間に相関があることを報告しています。一方、[4]は11人で予測回数が実回数を上回ったことを示し、[7]ではKD項目を単純合計した予測の独立テスト群における決定係数が-1.5973と、精度の低さを示しました[7]。研究によって示された結果は一様ではなく、どの研究でも同じように『回数が多くなりやすい人を見分ける力』が確認されたわけではありません[1, 2, 4, 7]。ご自身の肌とインクにどう当てはまるかは、医師が実際に見て見積もることになります。
スコアの数字とどう付き合うか
合計点は治療回数のおおよその目安であり、その回数で終わることを保証するものではありません。12例中1例しかぴたり一致しなかったスイスの検証[6]や、テスト群109人で平均誤差2.14回だったイタリアの検証[7]を見れば、最初の見積もりから実際の回数が数回離れることは珍しくありません。[4]の11人全員、[6]の12例中9例では、実際の回数が予測より少なく済んでいます。ただしこれらは特定の施設・条件での結果であり、すべての方に同じ割合で当てはまるとは限りません。
実際の見積もりでは、点数よりもインクの密度と部位に注目します。部位別の調整平均は上部体幹で4.3回、手や指で7.8回でした[6]。密度別では低密度で3.2回、高密度で9.0回でした[6]。部位と密度を組み合わせた群の平均ではなく、それぞれの条件を個別に比べた値です。カウンセリングでは、ご自身のタトゥーがどちらに近いかを医師と一緒に確かめてください。喫煙や8週間以下の短い治療間隔は、反応の低さと関連することが観察研究で報告されています[5]。ただしこれは関連を示したものであり、禁煙や間隔を空けることで除去成績が改善すると検証されたわけではありません[5]。
最後に、時間の経過にも目を向けてみましょう。イスラエルの11人では、最終治療の6か月後に75.5だった除去評価が、平均4.36年後には93.6まで上がっていました[4]。これは写真をもとにした医師の視覚評価の変化であり、体内でインクがどう処理されているかを直接示すものではありません。治療直後の見た目だけで判断せず、その後の変化も確認する必要があります。回数と費用の見通しは、肌とインクを診たうえで一人ひとりにご案内します。予約時にご相談ください。
よくある質問
Kirby-Desaiスケールとは何ですか?
レーザーでタトゥーを除去するのに必要な回数を見積もるための点数表です。肌の色のタイプ、部位、インクの色、インクの量、瘢痕の有無、重ね彫りの有無という6項目を点数にして合計し、その合計点を回数の目安とします。2009年に米国の皮膚科医らが100人の治療記録から作りました。
スコアの予測はどのくらい当たりますか?
原著ではスコアと実回数の相関係数がr=0.757でしたが、これは傾向の強さで、ぴたり当たった割合ではありません。後続の検証では、12例中1例だけが完全一致だった報告や、11人全員で実施された治療回数が予測より少なかった報告があります。おおまかな幅を示す目安として使うのが妥当です。
タトゥー除去の回数に関係する主な条件は何ですか?
黒いタトゥー116人の解析では、インクの密度が必要な治療回数と強く関係していました。密度別の調整平均は、低密度で3.2回、高密度で9.0回でした。部位別では手や指が7.8回、上部体幹が4.3回でした。これは必要回数との関連であり、予測が外れる最大の原因を調べた結果ではありません。喫煙や治療間隔についても、別の観察研究で反応の低さとの関連が報告されています。
自分のタトゥーは何回で消えますか?
インクの密度、色、部位、肌の状態を医師が実際に見て見積もります。スコアはその補助であり、最初の数回の反応を見て見積もりを更新していきます。具体的な回数と費用の見通しは、カウンセリング時にご相談ください。
参考文献
- [1]. William Kirby, Alpesh Desai, Tejas Desai, Francisca Kartono, Geeta Patel. The Kirby-Desai Scale: A Proposed Scale to Assess Tattoo-removal Treatments. (Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 2009). リンク
- [2]. Masa Gorsic, Irena Bacak, Uros G. Ahcan, Viljem H. Topcic. Evaluation of the Efficacy of Tattoo-Removal Treatments with Q-Switch Laser. (Journal of the Laser and Health Academy, 2013). リンク
- [3]. Sanjeev J. Aurangabadkar, Swapnil D. Shah, Deepak S. Kulkarni, Madhavi S. Aurangabadkar. A Prospective Open-labeled Study of Tattoo Removal with Q-Switched Nd:YAG Laser Utilizing the R0 Technique and Correlation with Kirby–Desai Scale. (Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery, 2019). doi:10.4103/JCAS.JCAS_72_19. リンク
- [4]. Ella Egozi, Ohad Toledano. Retrospective clinical evaluation of Q-switched Nd:YAG laser safety and efficacy in tattoo removal: A new perspective on the Kirby–Desai scale. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2024). doi:10.1111/jocd.16201. リンク
- [5]. Pier Luca Bencini, Simone Cazzaniga, Athanasia Tourlaki, Michela Gianna Galimberti, Luigi Naldi. Removal of tattoos by Q-switched laser: variables influencing outcome and sequelae in a large cohort of treated patients. (Archives of Dermatology, 2012). doi:10.1001/archdermatol.2012.2946. リンク
- [6]. Candice Menozzi-Smarrito, Nicolas Pineau. A New Predictive Model for Tattoo Removal: Leveraging Patient and Tattoo Characteristics. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2025). doi:10.1111/jocd.70186. リンク
- [7]. Valerio Pedrelli, Emanuele Tauro, Matteo Tretti Clementoni, Alessandra Zevini, Riccardo Barini, Enrico Gianluca Caiani. Prediction of Tattoo Removal Sessions With Picosecond Lasers: Development and Validation of a Novel Clinical Scale With Machine Learning Techniques. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2026). doi:10.1111/jocd.71088. リンク
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