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    アートメイク前日と当日、お酒やメイクはどこまで大丈夫?

    2026年10月19日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    アートメイク前日と当日、お酒やメイクはどこまで大丈夫?

    施術前の準備は、受けるクリニックの案内をいちばんの基準に

    アートメイクの予約日が近づくと、「お酒は飲んでいい?」「まつエクは外したほうがいい?」といった疑問が次々に出てきます。この記事では、施術の直前によく聞かれる質問に、Q&Aの形で順に答えていきます。それぞれの答えには、医学的な研究や公的機関の情報から分かる理由を添えました。理由が分かれば、なぜその準備が必要なのか納得しやすくなり、当日も落ち着いて施術に臨めます。

    ただし、飲酒を何時間前に控えるか、どのスキンケアを当日使えるかといった細かな決まりは、施術部位や使う製品、施設の衛生手順によって変わります。また、外科手術の前のルールが、そのままアートメイクに当てはまるわけでもありません。手術を対象にした資料は、対象となる手技の違いや、ほかの分野に直接当てはめることの限界を自ら示しています[4, 7]。

    そのため、具体的な可否や期限は、施術を受けるクリニックの事前案内と医師の判断を優先してください。この記事は、その案内を読むときや医師に相談するときの手がかりとしてお使いください。最後のセクションでは、予約の段階で何を伝えておくとよいかもまとめています。

    左から右へ「予約時」「前日」「当日(来院前)」の3つの時点を並べた横長のタイムライン図。各時点の下に、気になる項目(お酒、薬・サプリ、まつエク、メイク、洗顔・ス

    Q. 前日・当日のお酒は、出血や腫れに関わりますか

    お酒が血の固まり方に影響するかどうかは、研究でも調べられています。けがで血が出たときは、血液中の血小板という成分が集まって傷口をふさぎます。2000年に報告された実験では、健康な人に体重1kgあたり0.25mLまたは0.5mLの純アルコールを飲んでもらい、1時間後の血小板の集まり方を測りました[1]。0.5mL/kgは、体重60kgの人なら純アルコール30mLにあたる量です。

    0.5mL/kgの群では、全血(成分を分けない血液)で測った血小板の集まりが、測定条件によって15.4%、22.6%、10.5%抑えられました[1]。著者らは、飲んだ量が多いほど抑える働きが強かったと結論づけています[1]。2004年の実験では、短時間に6杯分を飲んだあと、血液が流れる状態に近い条件で、血を固める材料のひとつであるフィブリノゲンに血小板がくっつく力が弱まりました。この差は統計的に意味のあるものでした(p=0.025)[2]。飲み始めから90分後と180分後には、血小板のかたまりも小さくなっています[2]。一方で、コラーゲンへのくっつきやすさは変わりませんでした[2]。

    このように、お酒の影響は飲む量や測り方、測る時間によって違って見えます。また、どちらの研究も採血した血液を調べたもので、アートメイク中の出血量や施術後の腫れ、色の定着を測ったものではありません[1, 2]。それでも、お酒が血小板の働きに影響しうることは、知っておいて損はありません。飲酒をいつから控えるかは、予約時の案内に従ってください。飲み会などの予定がある方は、予約の段階でご相談ください。

    診察室のカウンターに並ぶ赤ワイングラスと水のグラス、奥に薄紫ガウンの女性

    Q. 普段の薬やサプリは、自分の判断でやめてもよいですか

    「血が止まりにくくなるなら、薬を休んだほうがいいのでは」と考える方もいます。ですが、自己判断で薬をやめるのは避けてください。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医師や薬剤師に指示された用法・用量を守り、自分の判断で量を変えたりやめたりしないよう案内しています[3]。長く飲んできた薬の中には、少しずつ減らす必要があるものもあると説明しています[3]。

    サプリメントも、「すべてが出血を増やす」わけではありません。手術前のサプリメントと出血を調べた2022年のレビューでは、ニンニクとホーソン(サンザシ)は、血を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を使っていない人でも、手術時の出血と強い関連があるとされました[4]。抗凝固薬を使っている人では、イチョウ葉、コンドロイチン・グルコサミン、メラトニン、ウコンで出血リスクとの関連が報告されています[4]。一方、魚油、ジンセン(薬用人参)、ノコギリヤシは、抗凝固薬を使わない場合に出血と関連する根拠はなかったとしています[4]。

    同じレビューの著者らは、不要なサプリメントは手術の2週間前からやめるのが望ましいと述べています[4]。ただし、これは手術についての提案で、根拠の多くは特定の外科分野のものです。著者ら自身も、すべての分野にそのまま当てはめられないと書いています[4]。薬やサプリをどうするかは、施術を担当する医師と、薬を出している処方医の判断が必要です。市販薬やサプリも含め、使っているものをすべて伝えてください[3]。

    白い診察室のリネンクロスに置かれた小皿に盛られた無地のカプセルと錠剤

    Q. まつエクをつけたまま来院してもよいですか

    まつ毛エクステンション(まつエク)は、目のすぐそばで接着剤やリムーバーを使う施術です。2012年に報告された研究では、2007年3月から2010年3月に、まつエクのあとの目の症状で眼科を受診した21〜52歳の女性107人を調べました[5]。接着剤やリムーバーが目に入って起きる角結膜炎(黒目と白目の表面の炎症)は64人にみられました[5]。接着剤によるアレルギー性の眼瞼炎(まぶたの炎症)は42人で、4人は両方を発症していました[5]。

    この研究では、調べた接着剤3製品すべてから、基準値を上回るホルムアルデヒドが見つかっています[5]。目元は、こうした製品の影響が症状として出やすい場所です。アイラインのアートメイクは、まさにこのまつ毛の生え際に色を入れる施術です。眉のアートメイクも、目に近い場所で行います。目元にほかの施術の接着剤や刺激が重なることは、気にかけておきたい点です。

    ただし、この研究はアートメイクの前にまつエクをいつ外すべきかを調べたものではありません[5]。外す必要があるか、外すなら何日前かは、施術部位やクリニックの方針によって変わります。アイラインや眉など目元に近い施術を予約する方は、まつエクをつけていることを予約時に伝え、どうすればよいかご相談ください。

    自然光の下、まつエクをつけていない素のまつ毛と目元を接写した横顔

    Q. メイクをしたまま来院してもよいですか

    施術する場所を清潔に保つことは、感染を防ぐための基本です。米国食品医薬品局(FDA)は、無菌でない器具や針が肝炎などの感染症を広げるおそれがあるとして、器具が清潔で衛生的であることの大切さを示しています[9]。さらに、衛生的な手順が守られていても、汚染されたインクが感染の原因になった例があると案内しています[9]。器具やインクだけでなく、肌の上の状態も清潔さに関わります。

    化粧品そのものに、菌がついていることもあります。イランの美容サロン10店で、使用中の肌用・アイメイク用化粧品52点を調べた研究では、52点すべてから細菌が見つかりました[6]。カビや酵母の汚染は全体の19.2%で、パウダーでは38.5%、アイライナーでは30.0%でした[6]。ただし、これはサロンで使われている化粧品の調査です。自宅で使う自分の化粧品や、施術前にメイクを落とすことの効果を測ったものではありません[6]。

    当日のメイクをどこまでしてよいか、施術部位のメイクをどう落とすかは、部位や使う製品、施設の衛生手順によって変わります。眉の施術なら眉メイク、リップの施術ならリップやグロスなど、気になる部分がある方は予約時に確認しておくと、当日あわてずにすみます。わからないことがあれば、来院時にスタッフへお伝えください。

    Q. 当日の洗顔やスキンケアは、どこまでしてよいですか

    洗顔やスキンケアをどこまでしてよいかも、よく聞かれる質問です。参考になるのは、手術の感染予防のガイドラインです。米国疾病予防管理センター(CDC)が2017年に出したガイドラインは、5,759件の論文の題名・要約を評価し、170の研究をもとにまとめられました[7]。そこでは、少なくとも手術の前夜に、石けんや消毒薬で全身のシャワーか入浴をするよう示しています[7]。

    ただし、これは手術の感染対策です。アートメイク当日の洗顔のしかたや、化粧水・乳液・日焼け止めを使えるかどうかを直接決めるものではありません[7]。成分の参考になる資料としては、2026年に発表された国際的な専門家の合意があります。14人の専門家が44種類のスキンケア成分について、美容医療の施術の前、施術当日、短期のアフターケア、1週間以降の4つの時点で使ってよいかを評価しました[8]。

    その結果、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、グリコール酸、乳酸、レチノイド、サリチル酸などは、施術当日の使用に向かないと判断されています[8]。角質ケアやニキビ向けの化粧品で見かけることのある成分です。この合意はアートメイクだけを評価したものではなく、何日前にやめるかも示していません[8]。普段使っている製品の名前や成分を控えておき、予約時や来院時に医師へ伝えてください。

    迷ったときは、予約の段階で医師に伝えてください

    前日・当日の準備で迷ったら、自分で決めずに、施術を受けるクリニックに相談するのがいちばん確実です。相談するときは、次のことを伝えるとスムーズです。前日や当日にお酒を飲む予定があるか。処方薬・市販薬・サプリメントで使っているものは何か[3]。まつエクをつけているか。普段どんな洗顔料やスキンケア用品を使っているか。メモにまとめておくと、伝えもれを防げます。

    薬については、施術を担当する医師だけでなく、その薬を出している処方医にも、アートメイクを受ける予定を伝えておくと安心です。PMDAも、複数の医療機関や薬局を使う場合は、市販薬を含めて使っている薬をすべて伝えるよう求めています[3]。お薬手帳があれば持参すると、薬の名前や量を正確に伝えられます。

    ここで紹介した研究は、どれもアートメイクの準備のしかたを直接決めるものではありません。だからこそ、一人ひとりの体調や施術部位を見たうえでの医師の判断が大切になります。気になることは小さなことでも、予約のときにご相談ください。疑問をなくしてから当日を迎えるほうが、安心して施術を受けられます。

    予約時に伝えたいことのチェックリスト図。縦に5項目を並べ、それぞれにチェックボックスとシンプルなアイコンを添える:「前日・当日の飲酒の予定」「処方薬・市販薬・サ

    よくある質問

    アートメイクの前日や当日にお酒を飲んでもよいですか?

    健康な人を対象にした実験では、飲酒後に血小板(血を止める働きをもつ血液中の成分)の働きが一部抑えられたという結果が出ています。ただし、アートメイク中の出血量を測った研究ではありません。飲酒を控える時期は、施術を受けるクリニックの案内に従ってください。飲み会などの予定がある方は、予約時にご相談ください。

    普段飲んでいる薬は、施術の前にやめたほうがよいですか?

    自己判断でやめないでください。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、指示された用法・用量を守り、自分の判断で量を変えたりやめたりしないよう案内しています。少しずつ減らす必要がある薬もあります。市販薬やサプリメントも含めて、使っているものをすべて医師に伝えてください。

    サプリメントはすべて出血を増やすのですか?

    すべてではありません。手術前のサプリメントを調べたレビューでは、ニンニクやホーソンは手術時の出血との関連が強いとされました。一方、魚油、ジンセン、ノコギリヤシは、抗凝固薬を使わない場合に出血と関連する根拠はなかったとしています。続けるかどうかは医師にご相談ください。

    まつエクをつけたままアートメイクを受けられますか?

    外す必要があるかどうか、外すなら何日前かは、施術部位やクリニックの方針によって変わります。アイラインや眉など目元に近い施術を予約する方は、まつエクをつけていることを予約時に伝えてください。

    当日の洗顔やスキンケアはどうすればよいですか?

    美容医療の専門家による国際的な合意では、グリコール酸やレチノイド、サリチル酸などの成分は施術当日の使用に向かないとされています。この合意はアートメイクだけを評価したものではありません。普段使っている製品の名前や成分を控えておき、医師に伝えてください。


    参考文献

    1. [1]. Q. H. Zhang, K. Das, S. Siddiqui, A. K. Myers. Effects of acute, moderate ethanol consumption on human platelet aggregation in platelet-rich plasma and whole blood. (Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 2000). リンク
    2. [2]. Dylan W. de Lange, Michael L. Hijmering, Anouk Lorsheyd, Wilco L. G. Scholman, Rob J. Kraaijenhagen, Jan-Willem N. Akkerman, Albert van de Wiel. Rapid intake of alcohol (binge drinking) inhibits platelet adhesion to fibrinogen under flow. (Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 2004). doi:10.1097/01.alc.0000141808.62230.75. リンク
    3. [3]. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構. Q9 医師から処方されたくすり(医療用医薬品)を使用する場合、どんなことに注意したらよいですか?. (独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)). リンク
    4. [4]. Jess Hatfield, Saadeddine Saad, Chad Housewright. Dietary supplements and bleeding. (Proceedings (Baylor University Medical Center), 2022). doi:10.1080/08998280.2022.2121575. リンク
    5. [5]. Yuki Amano, Yuka Sugimoto, Minoru Sugita. Ocular disorders due to eyelash extensions. (Cornea, 2012). doi:10.1097/ICO.0b013e31821eea10. リンク
    6. [6]. Leila Dadashi, Reza Dehghanzadeh. Investigating incidence of bacterial and fungal contamination in shared cosmetic kits available in the women beauty salons. (Health Promotion Perspectives, 2016). doi:10.15171/hpp.2016.25. リンク
    7. [7]. Sandra I. Berríos-Torres, Craig A. Umscheid, Dale W. Bratzler, et al.; Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee. Centers for Disease Control and Prevention Guideline for the Prevention of Surgical Site Infection, 2017. (JAMA Surgery, 2017). doi:10.1001/jamasurg.2017.0904. リンク
    8. [8]. Peter Bjerring, Zoe D. Draelos, Sabrina G. Fabi, Greg J. Goodman, Kwun Cheun Hau, Ariel Haus, Izolda Heydenrych, Jihee Kim, Liang-Chen Lin, Karim Sayed, Hema Sundaram, Rieko Tsubouchi, Yan Wu, Patricia Brieva, Hina Choudhary, Leihong Flora Xiang. International Expert Consensus on Integrated Skincare Active Ingredients for Pretreatment and Posttreatment Use With Medical Aesthetic Procedures to Enhance Skin Benefits. (Journal of Cosmetic Dermatology, 2026). doi:10.1111/jocd.70880. リンク
    9. [9]. U.S. Food and Drug Administration. Cosmetics Safety Q&A: Tattoos and Permanent Makeup. (U.S. Food and Drug Administration). リンク

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