Journal / inklinic
タトゥー除去の経過、照射後15日目から8週目は何を見て記録するか
2026年9月28日

記録を始める前に、基準日をそろえる
レーザーでタトゥーを消す治療は、1回の照射では終わりません。照射のあとに皮膚の中で色素が処理される時間があり、そのうえで次の照射を受けます。次の照射までに、色がどう変わるかを確認します。写真は肌の色や光の当たり方で印象が変わります。そこでこの記事では、濃さ、境界、色味、周囲の赤みを言葉と数で書き残す方法をお伝えします。
まず基準日を決めます。この記事では、照射した日を0日目とします。かさぶたが取れる時期は人によって違いますが、区切りとして15日目を記録の起点にします。次回照射を照射日から8週目とすると、15日目から56日目までの41日間、約6週間の記録になります。「8週」を照射日から数えるのか、かさぶたが取れた日から数えるのかで、同じ言葉でも2週間ずれます。ノートの最初に「0日目は照射日」と書いておくと、あとで見返すときに迷いません。
記録する項目も先に決めておきます。濃さは、隣の無地の肌と比べてどれくらい暗いか。境界は、線のふちがくっきりしているか、にじんでいるか。色味は、元の色がそのままか、灰色や茶色、青みがかって見えるか。周囲の赤みは、あるかないか、ある場合は線から何ミリまでか。この4点を毎週同じ曜日に見ます。

同じ条件で見る、記録の取り方
濃さは、0から10の自分なりの目安で書きます。10を1回目照射前の濃さ、0を隣の無地の肌とすると、週ごとの変化を数で並べられます。境界は「くっきり」「少しにじむ」「ぼやける」のどれに近いかを書きます。色味は、黒が黒のままか、灰色や茶色に見えるか、青みが強くなったかを言葉で残します。赤みは、線から外へ何ミリまで広がっているかを定規で測ると比べやすくなります。
光の条件をそろえることが大事です。窓際の昼の光と、夜の電球色の照明では、同じ肌でも色味が違って見えます。できれば毎回同じ場所、同じ時間帯、同じ距離で見ます。写真も撮っておきますが、写真は主観の記録を確かめる補助として使います。写真だけで薄くなったかどうかを判断しないようにします。
記録には「変わらなかった」も書きます。変化がない週があることは、あとで説明するように、皮膚の中の処理が止まっていることを意味しません。空欄にせず「先週と同じ」と書いておくと、次回照射の前に医師へ伝える材料になります。逆に、濃くなった、赤みが広がった、痛みが出たといった変化は、日付とあわせて必ず残します。
15日目、かさぶたが取れたあとに見ておくこと
この記事では15日目を記録の起点としていますが、これは便宜上の区切りです。皮膚の中の反応が必ずこの日に切り替わるわけではありません。ヒトのタトゥーにQスイッチ・ルビーレーザーを当てて顕微鏡で調べた研究があります。照射直後には色素を含む細胞が傷つき、色素粒子の一部は小さく層状になりました。24時間後には好中球という白血球が集まり、11日後には色素は再び細胞の中に収まっていました[1]。この研究は特定の機器と条件での観察です。部位や皮膚のタイプ、使用するレーザーが違えば、同じ経過をたどるとは限りません。
表面の反応については、755 nmピコ秒アレキサンドライトレーザーの前向き試験に報告があります。黒色または青色の濃いタトゥーがある15人が登録され、12人が試験を完了しました[5]。この試験では、痛みは照射直後に消え、腫れと水疱は1週間以内に消えました[5]。対象がこの試験の15人に限られるため、全員に当てはめることはできません。この試験は、かさぶたの有無や赤みの持続、15日目時点の皮膚状態を系統的に評価したものではないため、15日目を急性期の反応が落ち着いた時期と特定する根拠としては使えません。
この日の記録では、濃さを1回目照射前の写真と比べて書きます。境界は、照射前にくっきりしていた線がどう見えるか。色味は、元の色と違いがあるか。赤みは、線のまわりにどれくらい残っているか。ここで書いた4点が、以後の週の比較の基準になります。かさぶたが取れた直後は、こすらず、光を当てて見るだけにします。ケアの方法はレーザーの種類や施術部位、皮膚の状態によって異なるため、詳しくは施術を受けた医師の指示に従ってください。
3週目から4週目、皮膚の中で起きているとされること
色が薄く見える背景には、マクロファージという細胞の働きがあります。マクロファージは異物を取り込む細胞です。352人を解析したレーザー除去のコホート研究の考察では、レーザーの光を吸って小さくなったインクの断片がマクロファージに貪食され、リンパ系を通じて運ばれるという先行研究の知見が引用されています。この移送過程を研究[4]自体が直接測定したわけではありません[4]。
取り込まれた色素が、そのまま皮膚から排出されるとは限りません。マウスの皮膚に緑色のインクを入れた研究では、色素を保持する細胞が真皮マクロファージであることが示されました[2]。色素を抱えたマクロファージが死ぬと色素が近くに放出され、近くにいる、または新たに入るマクロファージがまた取り込みます。著者らはこの「捕まえて、放して、また捕まえる」の繰り返しが、タトゥーが長く残る仕組みを説明するとしています[2]。色素を保持する細胞が入れ替わっても、色素は皮膚に残る仕組みです。
この研究はマウスのモデルで、ヒトのレーザー照射後の週ごとの色の変化を直接測ったものではありません[2]。ただ、3週目や4週目に「あまり変わらない」と記録することがあっても、見た目が同じなら色素を抱える細胞も同じとは限らないことは、この仕組みから分かります。記録では「前週と同じ」「少し灰色がかった」など、小さな差もそのまま書きます。
6週目から8週目、照射の間隔と結果の関係
6週目を過ぎると、変化が緩やかに見える週が続くことがあります。その時期に次の照射をいつ受けるかを考える材料として、照射間隔と結果の関係を調べた研究があります。1995年1月1日から2010年12月31日までに397人が連続登録されました。そのうち352人(男性201人、女性151人、年齢の中央値30歳)を解析した前向きコホートです[4]。Qスイッチ1064/532 nm Nd:YAGレーザーと755 nmアレキサンドライトレーザーを色に応じて使い分け、照射間隔は6週間以上でした[4]。
この研究では、照射間隔が8週以下だった208人で10回照射後の除去成功率は40.7%でした[4]。9から10週の51人では47.4%でした[4]。10週超の93人では61.5%でした[4]。間隔を長く取った群ほど、同じ10回でも成功率が高い傾向がありました[4]。ただしこれは観察研究における関連です。喫煙、色、部位、面積、色素密度なども反応と関連しており、間隔だけの効果として断定することはできません[4]。実際の間隔は、肌の状態を診たうえで医師と決めます。
8週目には、次回照射に向けて経過を振り返ります。次回照射の直前に、1回目照射前の写真と並べて4点を見直します。濃さは10を基準にどこまで下がったか。境界はくっきりしたままか、ぼやけたか。色味は元の色と違うか。赤みは残っているか。この比較が、2回目の照射を受ける前に医師へ伝える材料になります。
1回の照射で期待する変化は、一律ではない
同じ回数を照射しても、見え方の変化は人ごとに大きく違います。レーザー治療後に生検を受けた20人の20タトゥーを対象にした後ろ向きの観察研究では、7個は薄くなり、9個は変化せず、4個は濃くなりました[6]。この研究はレーザー治療後に生検された症例に限られるため、一般的な黒色化率や無反応率としてそのまま読むことはできません[6]。二酸化チタンという白い顔料の存在は、不良な反応と有意に関連していました[6]。ただし著者らは、二酸化チタンが不良反応の主な原因かどうかを示すには追加の研究が必要だとしています[6]。抵抗性を示したタトゥーでは、深いところに緑色の色素が残る傾向がありました[6]。
352人のコホート研究でも、反応に差が出る条件が示されています。黒と赤以外の色、濃い色素密度、足や下腿の部位、面積30 cm²超のタトゥーは、反応の低下と関連していました[4]。色、密度、部位、面積が違えば、1回目の照射でどこまで薄くなるかも違います。ほかの人の経過と自分の記録を比べて焦る必要はありません。
レーザーの種類も関わります。ラットの背中に黒色タトゥーを作り、1064 nmナノ秒、1064 nmピコ秒、755 nm、595 nmのレーザーを1回ずつ当てた研究では、いずれも黒色タトゥーの除去効果がみられました[3]。効果は1064 nmが最も高く、次いで755 nm、595 nmでした[3]。色素粒子の大きさと真皮マクロファージの集まり方は、除去の効果と相関していました[3]。1064 nmではピコ秒とナノ秒の間に有意差はありませんでした[3]。色素がどれだけ小さく砕けたかが、そのあとの処理に関わることを示す結果です。
回数の目安と、1回で判断しない理由
全体としてどれくらいの回数がかかるのか、目安になる数値を二つの研究から見ます。352人のコホート研究では、この研究の基準による「除去成功」に達した割合は、10回照射後で47.2%でした(95%信頼区間41.8%から52.5%)[4]。15回照射後では74.8%でした(95%信頼区間68.9%から80.7%)[4]。ここでの「成功」は単に薄くなったことではなく、この研究が定めた除去の基準を満たしたことを指します。その基準には、除去に達したことに加えて、有害事象が一過性の低色素沈着または黒色化に限られることも含まれています[4]。この数値は352人全体の累積成功率であり、一人ひとりが何回で成功するかを示すものではありません。
一方、755 nmピコ秒アレキサンドライトレーザーの前向き試験では、試験を完了した12人全員が75%超の除去に到達しました[5]。12人中9人(75%)は2回から4回の照射で75%超に達し、75%超に必要だった平均照射回数は4.25回でした[5]。照射間隔は6±2週間でした[5]。対象は濃い色のタトゥーがある15人で、コホート研究とはレーザー、対象者、成功の定義が違うため、数値をそのまま並べて比べることはできません。
いずれの研究も、複数回の照射を前提にしています。1回目の照射から8週目までの記録で変化が小さくても、それだけで治療の見通しを決めないことが大切です。なお、ピコ秒レーザーの試験では最終照射の3か月後に、低色素沈着と色素沈着が報告されています[5]。8週目で記録を終えず、色が抜けたあとの肌の色も続けて書き残しておくと、あとで診察を受けるときに役立ちます。
次回照射の前に、記録をどう使うか
8週間分の記録は、次回の診察でそのまま使えます。1回目照射前の写真、15日目の記録、8週目の記録を並べて持参します。濃さの目安の数値、境界の変化、色味の変化、赤みの有無を順に伝えれば、医師は肌の状態とあわせて次の照射を判断できます。写真だけでは伝わりにくい「光の下でこう見えた」という情報が、言葉の記録で補えます。
とくに伝えてほしいのは、濃くなった、赤みが引かない、色味が青や緑に変わった、といった変化です。生検を受けた20人の20タトゥーを対象にした研究では、4例が濃くなり、抵抗性のタトゥーでは深部に緑色の色素が残る傾向がありました[6]。これは後ろ向きの観察研究で、レーザー治療後に生検された症例に限られるため、一般的な黒色化の起こりやすさを示す数値ではありません[6]。こうした見え方は、色素の成分や深さと関わる場合があるため、次の照射条件を決める前に医師が確認する必要があります。普段と違う痛みや腫れが続く、症状が悪化していくと感じる場合は、次回照射を待たず、早めに施術先へ連絡してください。気になる変化は、日付と一緒に書いて持ってきてください。
inklinicでは、医師の診察を受けたうえでレーザー除去を行います。記録の付け方や、次回照射までの過ごし方で迷うことがあれば、予約時にご相談ください。記録を見ながら、施術後の経過を一緒に確認します。
よくある質問
レーザー除去のあと、次の照射まで何を記録すればよいですか。
濃さ、線の境界、色味、周囲の赤みを、毎週同じ曜日、同じ光の条件で書き残します。1回目照射前の写真と比べ、変わらなかった週も「前週と同じ」と記録しておくと、次回照射の前に医師へ伝える材料になります。
照射から3週間たっても色があまり変わりません。効いていないのでしょうか。
見た目が同じでも、皮膚の中では色素の断片を取り込む細胞の入れ替わりが続いているとされます。マウスの研究では、色素を抱えた細胞が死ぬと別の細胞がまた取り込む繰り返しが示されています。1回の照射だけで効果を判断せず、記録を続けて次回の診察でご相談ください。
照射の間隔はどのくらい空けるのがよいですか。
352人を解析した研究では、照射間隔が8週以下の208人で10回照射後の成功率が40.7%、9から10週の51人で47.4%、10週超の93人で61.5%でした。間隔を長く取った群ほど成功率が高い傾向があります。実際の間隔は、肌の状態を診たうえで医師と決めます。
照射後にタトゥーが濃くなって見えることはありますか。
レーザー治療後に生検した20例の研究では、7例が薄くなり、9例は変化せず、4例は濃くなりました。二酸化チタンを含む色素が不良な反応と関連していました。濃くなったと感じたら、記録に残して次回照射の前に医師へ伝えてください。
参考文献
- [1]. C. R. Taylor, R. R. Anderson, R. W. Gange, N. A. Michaud, T. J. Flotte. Light and electron microscopic analysis of tattoos treated by Q-switched ruby laser. (Journal of Investigative Dermatology, 1991). doi:10.1111/1523-1747.ep12478570. リンク
- [2]. Anna Baranska, Alaa Shawket, Mabel Jouve, Myriam Baratin, Camille Malosse, Odessa Voluzan, Thien-Phong Vu Manh, Frédéric Fiore, Marc Bajénoff, Philippe Benaroch, Marc Dalod, Marie Malissen, Sandrine Henri, Bernard Malissen. Unveiling skin macrophage dynamics explains both tattoo persistence and strenuous removal. (Journal of Experimental Medicine, 2018). doi:10.1084/jem.20171608. リンク
- [3]. Xiao-Jie Du, Hong-Mei Zhou, Zhao Wang, Jing Liu, Jia-Feng Wang, Dong Li, Ting-Ting Wu, Bin Chen, Wei-Hui Zeng. Comparative study of 1064 nm nanosecond, 1064 nm picosecond, 755 nm, and 595 nm lasers for tattoo removal: An essential role by macrophage. (Lasers in Surgery and Medicine, 2022). doi:10.1002/lsm.23535. リンク
- [4]. Pier Luca Bencini, Simone Cazzaniga, Athanasia Tourlaki, Michela Gianna Galimberti, Luigi Naldi. Removal of Tattoos by Q-Switched Laser: Variables Influencing Outcome and Sequelae in a Large Cohort of Treated Patients. (Archives of Dermatology, 2012). doi:10.1001/archdermatol.2012.2946. リンク
- [5]. Nazanin Saedi, Andrei Metelitsa, Kathleen Petrell, Kenneth A. Arndt, Jeffrey S. Dover. Treatment of tattoos with a picosecond alexandrite laser: a prospective trial. (Archives of Dermatology, 2012). doi:10.1001/archdermatol.2012.2894. リンク
- [6]. E. V. Ross, S. Yashar, N. Michaud, R. Fitzpatrick, R. Geronemus, W. D. Tope, R. R. Anderson. Tattoo darkening and nonresponse after laser treatment: a possible role for titanium dioxide. (Archives of Dermatology, 2001). doi:10.1001/archderm.137.1.33. リンク
Related
