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    アートメイクは痛い?眉・リップ・アイラインで違う痛みと麻酔の実際

    2026年8月20日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    アートメイクは痛い?眉・リップ・アイラインで違う痛みと麻酔の実際

    痛みが不安でアートメイクをためらっている人へ

    アートメイクは、細い針で皮膚の浅い層に色素を入れていく施術です [12]。眉やリップ、アイラインを検討する人がまず気になるのは、やはり痛みではないでしょうか。体験談を見ると、眉は毛抜きで抜く程度だったという声がある一方で、リップやアイラインはしみるように感じたという声も目立ちます。ただし、こうした感想はあくまで個人の体験です。同じ部位でも、ほとんど平気だったという人と、かなりつらかったという人の両方がいます。

    実は、痛みの定義そのものが、この個人差を前提にしています。国際疼痛学会は、痛みを「実際または潜在的な組織損傷に関連する、またはそれに似た不快な感覚的・情動的体験」と定義しています [5]。皮膚や神経のつくりだけで、痛みの強さのすべてが決まるわけではありません。この記事では、体のしくみで分かっていることと、体験談として語られていることを区別しながら、麻酔でどこまで軽くできるのかまでお伝えします。

    体験談で語られる部位ごとの傾向

    体験談の中には、眉の痛みは比較的おだやかだったという声があります。ただし、これは収集方法や人数が分からない個人の感想であり、実証されたものではありません。毛抜きで毛を抜くときのようなチクチク感、日焼け後に肌をこすられるようなヒリヒリ感、と表現する人もいます。施術の途中で眠くなったという人もいれば、後半になるほどしみてきたという人もいます。初回より2回目のリタッチのほうが楽だったという人もいます。同じ眉でも、感じ方の幅はかなり広いのです。

    一方、リップやアイラインは感じやすかったという体験談もありますが、これも収集方法や人数が分からないものです。唇は口のまわり全体に刺激が響くようだった、アイラインは目のふちを触られる緊張感が痛みを強くした、といった表現です。ただし、ここで正直にお伝えしたいことがあります。眉・リップ・アイラインを同じ条件で比べ、施術中の痛みを数値で測った査読済みの研究は、少なくとも筆者が確認した範囲では見当たりませんでした。眉は軽くリップとアイラインは強い、という順位は、あくまで体験談レベルの傾向として受け取ってください。

    皮膚の厚さは顔の場所でこれだけ違う

    顔の皮膚の厚さについては、2025年に詳しい測定データが発表されています。美容医療クリニックに通う22〜73歳の45人を対象に、75MHzという高い周波数の超音波で、顔の38部位の皮膚の厚さを測った研究です [1]。その結果、皮膚の厚さには部位によって統計学的に意味のある差がありました。たとえば上まぶたの皮膚の厚さは中央値で573.50μm、つまり約0.57mmです [1]。ただしこれはあくまで測定値であり、実際のアイライン施術で針がどの深さまで届くかや、そこで感じる痛みの強さを示すものではありません。

    皮膚の厚さと痛みの強さが単純に比例することを示したアートメイクの研究は、確認できていません。厚さはあくまで判断材料のひとつです。同じ薄さの皮膚でも、その日の体調や緊張の度合いで感じ方は変わります。この数値は、アイラインの皮膚はとても薄いという事実を教えてくれますが、だから必ず一番痛い、とまでは言えないのです。

    顔の側面イラストを中央に置き、眉付近・唇・上まぶたの3か所から皮膚断面の拡大吹き出しを引き出す図。上まぶたの吹き出しには中央値573.50μm(約0.57mm)

    唇とまぶたに集まる感覚のセンサー

    唇の敏感さには、組織レベルの裏付けがあります。60〜80歳の献体から得た上唇6検体・下唇6検体を顕微鏡で調べた研究では、唇の赤い部分にマイスナー小体などの感覚受容器、いわば触覚のセンサーが確認されました [2]。しかも上唇の赤い部分では、下唇よりこのセンサーの密度が高かったと報告されています [2]。ただし、この研究が調べたのは感覚受容器の分布です。アートメイク施術時の痛みの強さを測ったものではない点には注意してください。

    まぶたも、神経の面では特別な場所です。1984年の形態学の研究では、ヒトのまぶたに、まつ毛を包むルフィニ終末や自由神経終末など、複雑な感覚神経終末の構成があることが確認されています [3]。また1994年の解剖研究では、上まぶたの眼窩隔膜前を垂直に走る神経は感覚神経であり、その多くは眼窩上神経に由来すると報告されました [4]。ただし、これらの研究は神経の分布や由来を調べたものであり、眉やリップと痛みの強さを比べたものではありません。

    それでも痛みの順位が決められない理由

    では、皮膚の薄さと神経の多さが分かれば、痛みの順位は決められるのでしょうか。答えは「いいえ」です。国際疼痛学会は、痛みを「実際または潜在的な組織損傷に関連する、またはそれに似た不快な感覚的・情動的体験」と定義しています [5]。この定義に照らすと、体のつくりだけから痛みの強さを決めることはできません。体のつくりは土台にすぎないのです。

    痛みが個人的な体験であるなら、当日の状態や心構えが感じ方に関わる余地はあります。よく眠ってから施術に臨む、不安な点は事前に質問しておく、痛かったら遠慮なく手を挙げると決めておく。どれも小さな準備ですが、これらが痛みを軽くする、あるいは施術の安全性を高めると証明した研究があるわけではありません。それでも、こうした準備をしておくと、当日の気持ちの面では落ち着きやすくなるかもしれません。

    表面麻酔はどこまで効くのか

    アートメイクの施術では、麻酔クリームなどの表面麻酔が使われることがあります。では、実際にどのくらい効くのでしょうか。参考になるのが、レーザーでタトゥーを除去する際の痛みを調べた試験です。成人30人を対象に、リドカイン7%・テトラカイン7%配合の外用麻酔とプラセボを同じ人の皮膚で比べた無作為化二重盲検試験があります。60分の塗布後、痛みの自己評価(VAS、100mmが最大)を比べたところ、麻酔側は平均42mm、プラセボ側は66mmでした [6]。麻酔で痛みははっきり下がりましたが、ゼロにはなっていません。

    歯科の分野でも似た結果が出ています。口の中への針刺しや麻酔注射を対象に、22件の無作為化比較試験、計1,029人をまとめた系統的レビューでは、17件で針刺入時の痛みの低下が報告されました [7]。一方で結果のばらつきは大きく、上顎への麻酔注射では、外用麻酔を使った群と使わなかった群に有意差がないという解析もありました [7]。表面麻酔は、効く場面が多いものの万能ではありません。これが研究から言える正直なところです。

    効き方を左右する条件も分かっています。リドカイン2.5%・プリロカイン2.5%配合クリームの米国添付文書には、効果は塗る面積と時間に左右されると記載されています [8]。また、尖圭コンジローマの凍結療法を受ける男性の外性器を対象にした試験があります。この試験では、外用麻酔だけでは十分な効果が得られませんでした。注射による局所麻酔を併用すると、痛みを抑えられたと報告されています [8]。これは男性外性器の試験結果であり、アートメイクの施術部位に同じ結果が当てはまるとは限りません。麻酔の種類や追加のしかたは、施術を受ける場所で必ず確認しましょう。

    強い麻酔クリームの自己使用は危険

    痛みを恐れるあまり、強い麻酔を自分で用意するのは危険です。米国食品医薬品局(FDA)は2024年3月26日、タトゥーなどの美容処置での使用をうたう一部の外用鎮痛薬について注意喚起を出しました [9]。高濃度リドカイン製品を広い範囲に塗る、刺激や傷のある皮膚に使う、長時間塗ったままにする、ラップなどで覆う。こうした使い方をすると薬の吸収が増え、不整脈、けいれん、呼吸困難といった重い健康被害につながるおそれがあるとしています [9]。

    アートメイクは針で皮膚に微細な傷をつけながら色素を入れていく施術です [11]。EMLAクリーム(リドカイン2.5%・プリロカイン2.5%配合)の米国添付文書は、開放創には使用しないよう注意しており、眼の近くへの使用も避けるよう明記しています [8]。厚生労働省は、アートメイクの施術を医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為だとしています。また、無免許者が業として行えば医師法第17条違反になるとしています [11]。だからこそ、施術を担当するのが医師本人かどうかを確認する価値があります [11]。個人輸入の高濃度麻酔クリームを自宅で塗ってから施術に向かう、といった方法は避けてください。麻酔について不安があれば、カウンセリングの段階で使う薬剤と手順を質問しておくと安心です。

    痛みに弱い人はどこから始めればいい?

    痛みに弱い人は眉から始めるべきだ、という助言を目にすることがあります。ただし、この順番を裏付ける比較試験や診療ガイドラインは確認できていません。体験談で眉が軽めと語られることもありますが、それが自分にも当てはまる保証はないのです。大切なのは、どの部位を選ぶかよりも、自分の不安を事前に伝えられる場所を選ぶことです。麻酔をどう使うか、施術中に痛みを伝えたらどう対応してもらえるか。この2点を確認できれば、部位選びの不安はかなり小さくなります。

    痛み以外の面も知っておくと、心の準備がしやすくなります。日本の1施設で眉またはアイラインのアートメイクを受けた計1,352人を質問票で調べた研究では、施術後の症状として、眉施術を受けた1,188人中98人がかゆみを、アイライン施術を受けた243人中32人が腫れを、それぞれ最も多い症状として報告しました [10]。この研究は施術中の痛みの強さを評価したものではありませんが、施術後にも部位ごとに違う反応が起こり得ることを教えてくれます。施術前のカウンセリングでは、痛みへの対応だけでなく、施術後のケアについても具体的に聞いておきましょう。

    まとめると、眉・リップ・アイラインの痛みに絶対の順位はありません。皮膚の薄さや神経の密度というデータはありますが、痛みはそれだけでは決まらない個人的な体験です [5]。表面麻酔で痛みは軽くできる一方、ゼロにはなりにくいことも研究は示しています [6]。だからこそ、麻酔の内容をきちんと説明してくれて、施術中の声に応えてくれる施術先を選ぶこと。それが、どの部位を選ぶ場合でも、痛みの不安への一番確かな備えになります。

    よくある質問

    アートメイクで一番痛い部位はどこですか?

    眉・リップ・アイラインを同じ条件で比べて痛みを数値化した査読済み研究は確認されていません。体験談では眉は軽め、リップやアイラインは感じやすいという声が目立ちますが、痛みは心理面や体調にも左右される個人的な体験であり、絶対の順位は決められません。

    麻酔をすれば痛みは完全になくなりますか?

    表面麻酔で痛みははっきり軽くなりますが、ゼロにはなりにくいと考えてください。レーザータトゥー除去の試験では、外用麻酔で痛みの自己評価が平均66mmから42mmに下がったものの、0にはなりませんでした。効き方には個人差もあります。

    市販や個人輸入の麻酔クリームを自分で塗ってもいいですか?

    おすすめできません。米国FDAは2024年、高濃度リドカイン製品を広範囲、傷のある皮膚、長時間、被覆下で使うと吸収が増え、不整脈やけいれんなどの重い健康被害につながるおそれがあると注意喚起しています。麻酔は施術先に相談してください。

    痛みに弱いのですが眉から始めるべきですか?

    眉から始めるべきという順番を裏付ける比較試験や診療ガイドラインは確認されていません。部位選びよりも、麻酔の内容を説明してくれて、施術中に痛みを伝えたら対応してもらえる施術先を選ぶことのほうが大切です。


    参考文献

    1. [1]. Szymon Korzekwa, Krystian Matusz, Michał Kukulski, Paweł Wawrzaszek, Natalie Górna, Włodzimierz Rosiński, Jakub Włosiański, Agnieszka Przystańska. Quantitative Analysis of the Human Face Skin Thickness-A High-Frequency Ultrasound Study. (Journal of Clinical Medicine, 2025). doi:10.3390/jcm14238401. リンク
    2. [2]. José Martín-Cruces, Benjamín Martín-Biedma, Yolanda García-Mesa, Patricia Cuendias, Juan J. Gaite, Olivia García-Suárez, Juan L. Cobo, José A. Vega. Exploring somatosensory innervation of the human lip: A focus on the vermilion. (Annals of Anatomy, 2023). doi:10.1016/j.aanat.2023.152159. リンク
    3. [3]. Bryce L. Munger, Zdenek Halata. The sensorineural apparatus of the human eyelid. (American Journal of Anatomy, 1984). doi:10.1002/aja.1001700205. リンク
    4. [4]. K. P. Vestal, J. E. Rathbun, S. R. Seiff. Anatomy of the terminal nerves in the upper eyelid. (Ophthalmic Plastic and Reconstructive Surgery, 1994). doi:10.1097/00002341-199403000-00001. リンク
    5. [5]. International Association for the Study of Pain. Terminology. (International Association for the Study of Pain, 2020). リンク
    6. [6]. John Z. S. Chen, Laurie G. Jacobson, Aboneal D. Bakus, Jerome M. Garden, Dina Yaghmai, Leonard J. Bernstein, Roy G. Geronemus. Evaluation of the S-Caine Peel for induction of local anesthesia for laser-assisted tattoo removal: randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter study. (Dermatologic Surgery, 2005). doi:10.1111/j.1524-4725.2005.31074. リンク
    7. [7]. F. P. A. Maia, C. A. Araujo Lemos, E. S. de Souza Andrade, S. L. D. de Morais, B. C. do Egito Vasconcelos, E. P. Pellizzer. Does the use of topical anesthetics reduce the perception of pain during needle puncture and anesthetic infiltration? Systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. (International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, 2022). doi:10.1016/j.ijom.2021.06.005. リンク
    8. [8]. AstraZeneca Pharmaceuticals LP / U.S. Food and Drug Administration. EMLA CREAM (lidocaine 2.5% and prilocaine 2.5%) Prescribing Information. (U.S. Food and Drug Administration, 2018). リンク
    9. [9]. U.S. Food and Drug Administration. FDA Warns Consumers to Avoid Certain Topical Pain Relief Products Due to Potential for Dangerous Health Effects. (U.S. Food and Drug Administration, 2024). リンク
    10. [10]. K. S. H. H. H. Kato, T. Inoue, Y. Takahashi, H. Mori. Complications of permanent makeup procedures for the eyebrow and eyeline. (International Wound Journal, 2021). リンク
    11. [11]. 厚生労働省. 美容所等におけるアートメイク施術について. (厚生労働省, 2025). リンク
    12. [12]. 厚生労働省. その美容医療、ちょっと待って! │ 厚生労働省. (厚生労働省, 2025). リンク

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