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    ピコレーザーとは|従来のQスイッチレーザーとの違い

    2026年6月25日

    Medical ColumnTokyo Ueno
    ピコレーザーとは|従来のQスイッチレーザーとの違い

    ピコレーザーは、近年タトゥー除去で広く用いられるようになったレーザーです。従来のQスイッチレーザーとはパルスの長さ(照射時間の単位)が異なり、色素へのアプローチに違いがあります。本記事では両者の仕組みや特徴、向き・不向きを、誇張を避けて整理します。効果や経過には個人差があり、複数回の治療が必要になる点もあわせてご説明します。

    ピコ秒とナノ秒の違い

    レーザーによるタトゥー除去では、「パルス幅」と呼ばれる、光が照射される時間の長さが治療の特徴を左右します。ピコレーザーはピコ秒(約10^-12秒)という非常に短い時間でエネルギーを照射するレーザーで、従来のQスイッチレーザーはナノ秒(約10^-9秒)の単位で照射します[3]。数値だけを見ると小さな違いに思えますが、ピコ秒はナノ秒のおよそ千分の一に相当する、大きな差です。

    パルスが短いほど、照射のエネルギーが熱として周囲の組織に拡散する前に、色素の粒子へ集中して作用しやすくなります。つまり、より短い時間で色素にエネルギーを伝えることで、熱による影響を抑えながら色素を砕く方向に働くと考えられています[1][3]

    ただし、パルスが短いこと自体がすべての症例で優れた結果を約束するわけではありません。タトゥーの色や深さ、肌の状態によって適したレーザーは異なり、効果や経過には個人差があります。

    ナノ秒(Qスイッチ) パルス幅 約10億分の1秒(10⁻⁹秒) 熱が周囲へ広がる(光熱) 周囲の肌にも負担が出やすい ピコ秒 パルス幅 約1兆分の1秒(10⁻¹²秒) 衝撃波で細かく砕く(光音響) 周囲の熱ダメージを抑えやすい
    図:ナノ秒レーザーは熱が周囲へ広がり(光熱)、ピコ秒レーザーは衝撃波で色素を細かく砕く(光音響)ことを比較した図。

    衝撃波で色素を砕く仕組み

    レーザーによるタトゥー除去の基本となる考え方に、「選択的光熱融解」があります。これは、特定の波長の光を、狙った標的(ここではタトゥーの色素)に選択的に吸収させ、周囲の正常な組織への影響を抑えながら標的に作用させるという原理です[1]。タトゥーの色によって吸収しやすい波長が異なるため、色に応じた波長のレーザーが用いられます。

    ピコレーザーで重視されるのは、熱による作用に加えて、光音響効果と呼ばれる機械的な作用です。きわめて短いパルスで色素粒子にエネルギーを与えると、粒子の内部で急激な変化が起こり、衝撃波のような力で色素を細かく砕くと考えられています[1][3]。砕かれて小さくなった色素は、体の働きによって少しずつ運び出されていきます。

    このように、色素を一度の照射ですべて取り除くのではなく、回を重ねながら段階的に細かくしていくのが、レーザー除去の基本的な流れです[2]

    ① 光の一撃で砕く ② 微粒子に分かれる ③ 免疫細胞が運び出す 排出 「砕く→運び出す」を繰り返すため、複数回・数か月かかります(個人差あり)
    図:光で色素を砕き、微粒子に分かれ、免疫細胞(マクロファージ)が運び出す3段階。複数回・数か月を要する。

    回数・肌への負担の比較(ピコ vs Qスイッチ)

    タトゥー除去はいずれのレーザーでも一度では完結せず、複数回の治療が必要になるのが一般的です。必要な回数は、色の種類や量、深さ、肌の状態などによって幅があり、一概に何回とは言えません[2]。一定の間隔をあけて、経過を見ながら治療を重ねていきます。

    ピコレーザーは、機械的に色素を砕く作用を活かすことで、症例によっては少ない回数で反応が得られる可能性が報告されています[3][5]。一方で、熱の拡散を抑えやすいことから、周囲の組織への負担を軽減できる場合があるとも考えられています。ただし、これらは症例や条件によって異なり、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

    また、レーザーの種類にかかわらず、治療に伴うリスクはゼロではありません。水ぶくれ、色素沈着、色素脱失、瘢痕などが生じる可能性があり、肌質や経過によって程度は異なります[2][4]。これらの可能性も含めて、治療前にカウンセリングで確認しておくことが大切です。

    項目ピコ秒レーザーQスイッチ(ナノ秒)
    パルス幅約1兆分の1秒(ピコ秒)約10億分の1秒(ナノ秒)
    色素の砕き方衝撃波で機械的に砕く(光音響)主に熱で砕く(光熱)
    周囲の熱負担抑えやすい相対的に大きめ
    粒子の細かさ微細化しやすいピコより粗い傾向
    向く場面難治色・肌負担を抑えたい時黒主体など幅広く

    いずれも複数回必要で、効果・経過には個人差があります。

    向き・不向き(万能ではないこと)

    ピコレーザーは有用な選択肢の一つですが、万能ではありません。タトゥーの色によってレーザーが反応しやすいものとしにくいものがあり、特に淡い色や一部のカラーインクは反応が得られにくいことがあります[4][5]。色や使われたインクの種類、入っている深さによって、適した方法や見込まれる経過は変わります。

    また、肌の色や状態、過去の治療歴、瘢痕の有無などによっても、適応や注意すべき点は異なります。同じタトゥーでも、ピコレーザーが適している場合もあれば、別のレーザーや方法を組み合わせたほうがよい場合もあります[2][5]。一人ひとりの状況に合わせて検討することが必要です。

    日本では、強いレーザーで皮膚組織に作用する行為は医行為に該当し得るため、こうした治療は医療機関での診察のうえで相談・実施されるのが実務上の前提となります。

    ピコ秒レーザーは「万能」ではありません

    ピコ秒でも1回では消えません。色・深さ・体質によって結果は変わり、水ぶくれ・色素沈着・色素脱失・瘢痕などのリスクもゼロではありません。適応や回数の見通しは、診察・カウンセリングでご確認ください。

    まとめ/受診の前に

    ピコレーザーは、ピコ秒という短いパルスと光音響効果を活かして色素を砕く点で、ナノ秒で照射する従来のQスイッチレーザーとは異なる特徴を持ちます[1][3]。症例によっては回数や肌への負担の面で利点が期待されることがありますが、万能ではなく、色や症例によって向き・不向きがあります。

    いずれの場合も、効果や経過には個人差があり、複数回の治療が必要になることが一般的です。水ぶくれや色素沈着、色素脱失、瘢痕などのリスクもゼロではありません[2][4]。最終的な適応や治療方針は、自己判断ではなく、医療機関での診察・カウンセリングで確認することをおすすめします。

    よくある質問

    ピコレーザーなら一度のタトゥー除去で消えますか?

    一度で完結することは基本的になく、複数回の治療が必要になるのが一般的です。必要な回数は色や深さ、肌の状態によって幅があり、一概には言えません[2]。効果や経過には個人差があります。

    ピコレーザーはQスイッチレーザーより肌への負担が少ないですか?

    ピコレーザーは熱の拡散を抑えやすく、症例によっては負担を軽減できる場合があると考えられています[3][5]。ただしすべての方に当てはまるわけではなく、水ぶくれや色素沈着、色素脱失、瘢痕などのリスクはレーザーの種類にかかわらずゼロではありません[2][4]

    どんな色のタトゥーでもピコレーザーで除去できますか?

    色によって反応しやすいものとしにくいものがあり、淡い色や一部のカラーインクは反応が得られにくいことがあります[4][5]。色やインクの種類、深さによって適した方法は異なるため、診察・カウンセリングでの確認が必要です。

    タトゥー除去はどこで受けるのがよいですか?

    日本では強いレーザーで皮膚組織に作用する行為は医行為に該当し得るため、医療機関での診察のうえで相談・実施されるのが実務上の前提です。適応やリスクを含め、カウンセリングで確認したうえで判断することをおすすめします。

    参考文献・出典

    1. Anderson RR, Parrish JA. Selective Photothermolysis: Precise Microsurgery by Selective Absorption of Pulsed Radiation. Science 220(4596):524-527(1983) doi:10.1126/science.6836297
    2. Hohman MH, Ramsey ML. Laser Tattoo Removal. StatPearls [Internet], StatPearls Publishing(2025)
    3. Saedi N, Metelitsa A, Petrell K, Arndt KA, Dover JS. Treatment of Tattoos With a Picosecond Alexandrite Laser: A Prospective Trial. Archives of Dermatology 148(12):1360-1363(2012) doi:10.1001/archdermatol.2012.2894
    4. Kent KM, Graber EM. Laser Tattoo Removal: A Review. Dermatologic Surgery 38(1):1-13(2012) doi:10.1111/j.1524-4725.2011.02187.x
    5. Ho SGY, Goh CL. Laser Tattoo Removal: A Clinical Update. Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery 8(1):9-15(2015) doi:10.4103/0974-2077.155066

    ※ 本ページは公開されている査読論文・公的資料をもとに、一般的な医学情報として作成しています。効果・経過には個人差があり、診断・適否の判断は医師の診察によります。

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